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“Yogiboで寝る馬”動画をどう撮った? 牧場代表・岩崎崇文が語る“あのCMができるまで”「失敗する気はなかった」「“たてがみ切り取り事件”は…」
posted2022/12/25 17:06
text by
伊藤秀倫Hidenori Ito
photograph by
Kiichi Matsumoto
「ん? なんだこれ?」
2019年9月14日の朝、繋養馬の手入れをしていたヴェルサイユリゾートファームの岩崎崇文代表は、ある馬の“異変”に気付いた。国内外でGⅠを5勝し殿堂入りした名馬、タイキシャトルのたてがみの一部が四角く切り取られていたように無くなっていたのである。散髪のためにスタッフがちょっとハサミを入れたのかと思い、「これさ、誰かタイキのたてがみ切った?」と尋ねるも、みな首を振るばかり。だとすると外部から侵入した何者かが無断でタイキシャトルのたてがみを切ったことになる――崇文さんはすぐにタイキシャトルを所有する引退馬協会に連絡するとともに警察に通報した。
犯人逮捕へと導いた崇文さんの意外な「特技」
切り取られたたてがみは長さ15センチ、幅8センチで、鋭利な刃物を使ったように見えた。さらにタイキシャトルだけでなく、ローズキングダムもたてがみも切られていた。
監視カメラは設置されておらず、目撃者もいなかったため、捜査は難航するかに思われたが、突破口は意外なところから開けた。
「僕はもともと自動車関係の会社に就職しようとしたほど車が好きなんで、来てるお客さんの車種とか何となく覚えちゃうんですね。当時は見学も予約制だったので、お客さんも日に10組程度しかいなかったこともあって、来ていた車の車種とか色を警察に全部伝えて、警察の方でそれをNシステム(自動車ナンバー自動読取装置)でしらみつぶしに調べてくれたようです」
その甲斐あって事件発生から半年後の翌年3月、埼玉県在住の50代の女性が器物損壊の容疑で逮捕された(その夫も同容疑で書類送検された)。この容疑者は警察の捜査に協力を申し出、自身のブログでも「犯人には早く自首してほしい」などと綴っていたが、その動機はフリマサイトなどでの販売目的だったという。
「事件発生後は、約200万円をかけて監視カメラを設置し、数ヵ月に渡っての見学中止の措置をとらざるをえませんでした」
引退馬が余生を送る場所として「ヴェルサイユリゾートファーム」の名が知られ、多くの人が詰めかけるようになれば、こういう「招かれざる客」が混じるリスクも高くなるというのも事実であろう。