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競馬PRESSBACK NUMBER
“Yogiboで寝る馬”動画をどう撮った? 牧場代表・岩崎崇文が語る“あのCMができるまで”「失敗する気はなかった」「“たてがみ切り取り事件”は…」
text by
伊藤秀倫Hidenori Ito
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/12/25 17:06
アドマイヤジャパンの動画で話題になる前には、たてがみ切り取り事件やネットでの炎上騒動を経験してきた岩崎崇文さん。本人に話を聞くと…
幸せな余生のために“人が動く”
繋養馬を主役にした仕掛けで、SNSをにぎわせ、ビジネスに結びつけている崇文さんの手腕に対して、一部のファンや牧場関係者から「引退馬を使って金儲けするなんて」と批判する声もないではないが、本人はまったく意に介していない。
「結局、ウチにいるのは基本的にお金を生み出さない子たちです。彼らをずっと生かして、幸せな余生を送ってもらうには、やっぱり何とかしてお金を生み出さないといけない。そのためには“人が動く”。馬と人がセットになって動いたとき、初めてあの子たちが活きてくるわけです。だからあの子たちのためにできることは何でもやる。馬たちと従業員を守るのが僕の最大の仕事ですから、他の人が何と言おうと関係ないんです」
従来の養老牧場の収入源といえば、ほぼ引退馬の預託料と寄付に限られていた。ヴェルサイユリゾートファームもオープン当初こそ本場からの「援助」に頼りきりという苦しい経営を強いられていたが、わずか3年足らずの間にスポンサー料、預託料、援助会員によるマンスリーサポート、「今は作れば作っただけ売れます」(崇文さん)というほど好調なグッズ販売、さらには牧場に併設されたカフェや宿泊施設からの収入という、多彩な収益の柱を打ち立てて、その経営基盤は盤石なものとなりつつある。
仰天プラン「今は温泉掘りたいと思っているんです」
それにしても大学卒業後、社会人経験もないまま飛び込んだ世界で、ほぼゼロから立ち上げた養老牧場をここまでに育てあげた崇文さんのビジネスセンスは、どこから来るのか。
「それって天性のものなんですか?」と尋ねると、「かもしれない」と崇文さんは笑った。
「別に失敗したら失敗したでいいんじゃないか、と思ってました。失敗する気はなかったんですけど」
本人と直接話してわかったことだが、こうした言葉は傲慢ともハッタリとも違う。すべては馬のために、という信念がブレていないから、言えることなのだろう。その信念に従っている限り、やりたいことは尽きない。新たな馬房や飲食施設などを建設中で場内の至るところで工事が行われていた。同ファーム内には牧場としては珍しい宿泊施設もあるが、これもいずれ新しくするつもりだという。
「あまりバンバン新しいもの建てると、母にちょっと言われますね(苦笑)。自分は『いいじゃん』と思ったら、結構後先考えずに何でも買っちゃうんで……。今は温泉掘りたいと思っているんです。来年は露天風呂を作ろうと。湯船から馬が見える露天風呂って、どこにもないですから」
露天風呂と雪と引退馬――崇文さんの目には、まだ誰も見たことのない景色がはっきりと見えている。