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“Yogiboで寝る馬”動画をどう撮った? 牧場代表・岩崎崇文が語る“あのCMができるまで”「失敗する気はなかった」「“たてがみ切り取り事件”は…」 

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伊藤秀倫

伊藤秀倫Hidenori Ito

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/12/25 17:06

“Yogiboで寝る馬”動画をどう撮った? 牧場代表・岩崎崇文が語る“あのCMができるまで”「失敗する気はなかった」「“たてがみ切り取り事件”は…」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

アドマイヤジャパンの動画で話題になる前には、たてがみ切り取り事件やネットでの炎上騒動を経験してきた岩崎崇文さん。本人に話を聞くと…

「破壊神」タニノギムレットのハイペースな牧柵破壊

 実は同ファームで「牧柵壊し」といえば、スイーズドリームスではなくタニノギムレットの代名詞である。様々な対策の結果、現在では「(壊すのは)1カ月に1度あるかないか」(崇文さん)というが、牧場に来た当初は2日に1本のペースで牧柵を壊し、スタッフの間で「破壊神」の異名をとった。牧柵の値段は柱1本で3300円、横板1本でも2300円なので、積もり積もればその修理代も牧場の経営に影響しかねなかった。

 そこで崇文さんらが考えたのが「タニノギムレットが壊した牧柵を使ったグッズ販売」である。札幌の木材家具専門店に依頼し、壊された牧柵の破片などからペンダント(17600円~)やキーホルダー(19800円)、スマホスタンド(29700円)などを製作し、ネット販売したところ――。

「2分ですべて完売しました。それぞれ30個ぐらいずつで数が少なかったのもありますが、値段もそれなりにするので、ここまで早く売り切れるとは思っていませんでした」

 本来であれば頭の痛い「牧柵壊し」も、馬の個性としてSNSで発信することで新たな展開を生む――賛否はあるにせよ、従来の牧場関係者にはなかった発想であるのは確かだ。それが最も顕著に表れたのが〈Yogiboで寝そべるアドマイヤジャパン〉の一件である。

 前述した通り、Yogiboの社長と副社長がヴェルサイユリゾートファームを訪れて以来、その理念に共感した同社は「何か協力したい」として、牧場のネーミングライツ(2021年に「Yogiboヴェルサイユリゾートファーム」と改称)という形でタイアップするようになった。

「もともとは副社長の方が無類の競馬好きだったことから始まった御縁なんです(笑)。ネーミングライツというのは、僕が言ったんですが、日本の牧場としては初めての試みでもあり、面白がってくれました。最初は1年間で1000万円ということでスタートしました」

Yogiboをアドマイヤジャパンのそばに置いた瞬間

 そういう経緯もあって、ある日「Yogiboと馬を組み合わせて何かをしないといけないかな」と考えた崇文さんは、放牧地で座るように寝ているアドマイヤジャパンのそばにそっとYogiboを置いてみたという。

「そうしたら、そのまま枕にして2、3分寝てくれました。動画を回しながら『これは完璧なものが撮れた!』と思いました。絶対バズるだろうって(笑)」

 その後の展開はご存じの通りで、今年5月に投稿された動画は「馬をダメにするソファー」として瞬く間に100万回以上再生され、ついにはアドマイヤジャパンがYogiboと正式なCM契約を結ぶに至り当初は1年間の予定だった牧場とのスポンサー契約も延長されることとなった。

【次ページ】 幸せな余生のために“人が動く”

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