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競馬PRESSBACK NUMBER
周囲からは「どうせすぐ潰れるよ」…それでも「引退馬のための牧場」を成功させた異端児が明かす“日本人と馬”への違和感「動物園に馬がいない」
text by
伊藤秀倫Hidenori Ito
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/12/25 17:05
CMなどで一躍有名になったヴェルサイユリゾートファーム。代表の岩崎崇文さんに牧場立ち上げの経緯を聞いた
どうやってお金を生み出していくのか?
こうして本場から車で10分ほどの場所に引退馬を専門で扱う「ヴェルサイユリゾートファーム」を立ち上げたのが2019年のことである。繋養馬にはローズキングダムやタイキシャトル、メイショウドトウといった有名馬だけでなく、引受先のなかった引退馬も含まれていた。ローズキングダムを受け入れて以降、崇文さんらの理念に共感する馬主や牧場関係者の輪が広がり始めたのである。
本場のヴェルサイユファームの代表は変わらず美由紀さんが務め、ヴェルサイユリゾートファームの経営は崇文さんに任されることになった。「一番大変だったことは?」と訊くと、崇文さんはこう答えた。
「やっぱり敷地が広い分、例えば柵をたてるだけでも、膨大な量が必要になるんですね。ひとつひとつの値段は大したことなくても、まとまるとスゴい値段になっちゃう。あるいは前の牧場時代の古い建物を建て替えるとなると、何千万円というお金がすぐ飛んで行くわけです。そのお金をどうやって生み出していこうか、というのが一番大きな課題でした」
サポーターズ制度というアイデア
預託料ぐらいしか収入のなかったオープン当初の経営は当然厳しく、生産、育成を行う本場からの援助を受けながら、なんとかやりくりしているという状態だったが、そのうち崇文さんのアイデアが実を結び始める。
そのひとつが援助会員(クラブサポーターズ)制度である。会員は、月額2000円(Lite)から10000円(VIP)までのコースを選ぶことで、引退馬支援を資金面で援助する。会員限定サイトや放牧地内での見学などの特典もさることながら、会員となることで単なる寄付ではなく、引退馬支援に積極的に関わっているというサークルへの帰属意識を持ってもらえることが大きいという。現在の会員数は約600人で立派な収益の柱となっている。