記者の悲鳴「クーラーが強すぎて、ヤバいです」

　公共施設だけでなく、宿舎でも油断はならない。大会期間中、筆者はアパートタイプのホテルで、カメラマンとライター計4人で共同生活をしている。宿泊2日目の朝、同宿する記者が困惑の表情で言った。

「クーラーが強すぎて、ヤバいです」

　このホテルは、冷房の設定温度を変えられる部屋もあれば、そうでない部屋もある。設定ボタンのない部屋のクーラーからは、施設側がサービス精神全開の温度で設定した冷気がドバドバ噴き出ている。実際、凍える記者の部屋に入ってみると、窓からは素敵な朝陽が差し込んでいるのに、ひんやり空間だ。

　これは何とかせねばならない。そのとき、同宿のカメラマンが動いた。写真家御用達の黒テープを取り出し、強硬手段に出た。クーラーの噴出口に黒テープをペタペタと貼って、冷気をブロック。途端に室内は程よい温度となり、それ以降、記者は快適な睡眠時間を得たそうだ。

黒テープによるクーラーの封じ込め作戦（右上）は成功。取材班は四六時中、暑さだけでなく寒さとも戦う　©Yoshiaki Matsumoto

室内だけでなく屋外でも待ち受ける“エアコン攻撃”

　開幕前はメディアセンターとホテルとの行き来が多かったが、W杯も開幕し、今では屋外での取材活動が増えてきた。これで熱戦の最前線に身を置き、冷えた身体をほぐせる。と、思いきや、屋外にも“寒冷前線”は待ち構えていた。史上初の中東開催となる今大会は、暑熱対策として各スタジアムに最新の冷房設備が取り付けられている。これで選手たちも、暑さで疲労困憊することなく、90分間走り切れるという触れ込みだった。

思い思いの方向へ冷気を送る　©Kiichi Matsumoto/JMPA

　確かに、気温が30℃に迫る13時キックオフの試合にはいい。世紀の番狂わせが起きたサウジアラビアvs.アルゼンチンでは、両チームがアグレッシブにプレーし、90分間足が止まることはなかった。

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