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メッシいきなり崖っぷち! イレブンと全国民の願いを背負ってメキシコと戦うアルゼンチンに注目せよ《天才FW最後の挑戦》 

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近藤篤

近藤篤Atsushi Kondo

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photograph byGetty Images

posted2022/11/26 11:00

メッシいきなり崖っぷち! イレブンと全国民の願いを背負ってメキシコと戦うアルゼンチンに注目せよ《天才FW最後の挑戦》<Number Web> photograph by Getty Images

カタールに到着して、自分たちの写真が施された飛行機から降りてくるメッシらアルゼンチン代表選手

 で、ものすごく前置きが長くなったんだけれど、その僕にとってサッカーというものを文字通り肌身で感じさせてもらった二つの思い出深い国が、日曜日(11月27日)、Cグループの第2戦で激突する。

 アルゼンチン対メキシコ。一方は優勝を狙い、一方は7大会連続ベスト16止まりの壁を突き抜けようともがいている。

 まずメキシコ。今回北中米予選では、カナダに次いで2位で通過した。監督はヘラルド・マルティーノ。彼は僕がアルゼンチンに辿り着いた頃、まだロサリオ市にあるニューウェルスという1部のクラブでプレーしていた。小柄で、重心が低く、スピードはないがサッカーセンスに満ち溢れたセントラルミッドフィールダーだった(ちなみにメッシが13歳までプレーしていたのも、このニューウェルスである)。

 愛称はスペイン語でパパを意味する“タタ”。そのマルティーノが率いるメキシコ代表だが、メンバーを見る限り今大会も悲願のベスト8進出はちょっと厳しそうだ。グループステージの初戦、ポーランドとは0−0と引き分けたが、かつてのような上り調子の雰囲気はない。

 チームの精神的支柱は37歳のGKギジェルモ・オチョア。今現在は国内の名門クラブ・アメリカでプレーしているこのベテランは、相変わらず軽やかなシュートブロックを見せ、代表でも不動のレギュラーである(初戦、レバンドフスキーのPKストップは見事の一言だった)。そしてもう一人の中心選手は、これまた今回が5度目のW杯となるミッドフィールダー、アンドレス・グアルダード。

 この二人のベテランを軸に、エドソン・アルバレス、イルビング・ロサーノといったスピードもありスキルもある一流選手を多数揃えるエル・トリではあるが、では今回のチームは「前回大会や前々回とことさらに何か違うのか?」と問われると、答えに窮するところだろう。

メキシコをメキシコたらしめるもの

 毎回指摘されることではあるが、メキシコの弱点の一つは、とにかく国内リーグ所属の選手が多いこと。メキシコリーグはテレビとスポンサーからもたらされる潤沢な資金で金銭面での条件も良く、才能はあるけれどあえて海外にはチャレンジしないという選手が多い。したがって、ここ一番という勝負どころの経験値が絶対的に足りない、と指摘される。

 と同時に、これは僕のメキシコ人に対する一般的な印象に過ぎないのだが、彼らはいい意味でどこかのんびり屋だ。本田圭佑がパチューカに所属していた頃も含めて何度かメキシコリーグには足を運んだけれど、メキシコ人のプレーはどこかルチャ・リブレ(メキシコプロレス)的な雰囲気があって、一気にペナルティエリアの中に侵入しても、そこでひとつトリッキーなプレーを入れてお客さんを盛り上げるというか、楽しませるというか、そういうシーンをよく目にした。天丼ギャグならぬ天丼フェイントである。

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