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メッシいきなり崖っぷち! イレブンと全国民の願いを背負ってメキシコと戦うアルゼンチンに注目せよ《天才FW最後の挑戦》
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byGetty Images
posted2022/11/26 11:00
カタールに到着して、自分たちの写真が施された飛行機から降りてくるメッシらアルゼンチン代表選手
最後にもうひとつ、これで話は終わりにする。みんな、偶然なんてないんだよ。このコパ・アメリカは、ほんとはアルゼンチンで開催されるはずだったんだ。でも神様はここ(ブラジル)に持ってきてくれたんだ。なんでかわかるかい? それは、俺たちがここマラカナンで勝って、全てが最高に美しく終わるためになんだよ! だから、みんな、自信を持って、落ち着いて、さあ行こうぜ!」
こんな言葉を聞かされて、メッシのことを好きにならないアルゼンチン人はいないし、メッシにW杯をとらせたくない、と思う人は、アルゼンチン人以外でもそういないだろう。
全アルゼンチン人の願い
初戦で大金星を献上したとは言え、南米予選も含めてここまで36戦無敗だったチームは充実している。GKはアルゼンチン代表の弱点の一つと言われてきたが、今大会でゴールマウスを守るエミリアーノ・マルティネスは抜群の安定感を見せてきた。ディフェンスラインは鉄壁とは言えないまでもヨーロッパで経験を積んだ選手を中心にこれといった穴は見つからず、中盤の底、ボランチのポジションは伝統的に強いし、そして前線にはトロ(雄牛)と呼ばれる典型的なゴールゲッター、ラウタロ・マルティネスを中心に面子が揃っている。
そして、たぶんこれが今大会のアルゼンチン最大の武器だと思うが、今のチームには、なんとしてもこの「天才」にW杯のタイトルをとらせてあげたいという強烈な渇望を強く感じることだ(アルゼンチン人の友人に言わせると、その願いはチームだけではなく、すべてのアルゼンチン人の願いでもあるらしい。彼もサッカー漬けの人間だから、話半分で聞かなければならないけれど)。
世界のすべては、メッシのために動き始めている。サウジアラビア戦が始まるまで、そう強く感じていたのは僕だけではないだろう。メキシコとの試合をきっかけに、これがメッシ最後の奇跡のストーリーになるのか、それとも開幕2戦目にして早くも幕は降りてしまうのか。
アルゼンチン対メキシコ戦、サッカージャンキーにとってはさまざまな思いが交錯する、たまらないカードだ。