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渡邊雄太はなぜNBAのオファーを蹴ろうとしたのか? “プライド”の裏にあった本音とは…今季ネッツで絶好調「人生何があるかわからない」
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byUSA TODAY Sports/Reuters/AFLO
posted2022/11/22 17:05
「ネッツに来られて本当によかった」と充実した日々を過ごす渡邊雄太
結果、ネッツのトレーニングキャンプに参加し、開幕ロスター枠を勝ち取っただけでなく、ローテーション入りして、チームにとって必要な戦力として認められるようになった。今では毎試合、20~30分出場し、3&D(3ポイントシュートとディフェンス)が巧い選手としてチームに大きく貢献し、勝負を競っている試合終盤でも使われるほどだ。特に3ポイントシュートは、シーズン合計42本中24本成功させており、成功率57.1%はリーグ首位だ(11月20日時点)。
11月20日のメンフィス・グリズリーズ戦で、勝負どころの第4クォーターに4本の3ポイントシュートを決めたときには、ケビン・デュラントを筆頭にチームメイトたちがベンチで立ち上がって喜び、ファンの間からも喝采が浴びせられた。
「本当に人生何があるかわからないなっていうか。自分の中ではほとんど心が決まっていて、Gリーグでしっかりやり直してNBAに返り咲けばいいって思っていたんで。まさか、しかもこのネッツでこんなにプレイタイムをもらえるとは思いもしてなかった」と渡邊。
KD、カイリーらとプレーするメリット
3ポイントシュートを高い確率で決められていることについては、「(昨季までとは)環境が違うのが一番大きい」と言う。
「もちろん今までもスター選手といっしょにプレーしてきたんですけど、やっぱりKD(ケビン・デュラント)、カイリー(・アービング)がいると、ディフェンスはもう必要以上に引きつけられるというか。常に2、3人が彼らのディフェンスをしているので、僕らが何もしなくても勝手にノーマークになってる。だから僕の今のシュートの確率が高いのは、彼らがそうやってディフェンスを引きつけてくれて、オープンのシュートを打てているからだと思うんで、そこの環境の変化ってすごく大きい」
昨季まで2シーズン所属していたラプターズは、渡邊がとても気に入っていたチームだった。できれば今季も残りたいと思っていたが、昨季で契約が切れた後にチームからのオファーがなく、しかたなく離れることになった。それが、ラプターズを離れてネッツに入ったことで、NBA選手としてのキャリアが花開いた。
「チームが変わるってことは、また1から人間関係を作っていかなきゃいけないですし、自分のことを信用してもらうために毎日毎日積み重ねになっていくので、(ラプターズに残りたいと考えていたことは)そういう部分で、ちょっと安定志向になってしまっていた部分があります。ラプターズはトロントの町も、あのチームもすごい好きだったんで。ただ、やっぱチーム変わってみたら本当また新しい発見があって、新しい人との出会いがあって。今はこのチームに来られて本当によかったと心の底から思っています」