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W杯代表・守田英正の妻が語る“超ハードな島生活”とは? 出会いは4年前「まさか家族として…」「子供をあやす姿を見たら驚くと思う(笑)」
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph byReina Fujisaka
posted2022/11/09 11:03
リスボンの街で子育てしながら守田英正を支える妻・藤阪れいなさん(左)。ポルトガル移住からW杯メンバー選出までの道のりを振り返ってもらった
いかに厳しい環境で新婚生活を送っていたかを知る上では、こんな話もある。
ポルトガルで念願の妊娠が判明したため、2人は現地での立ち会い出産を模索するが、島内の状況を調べた結果、現地で赤ちゃんを取り上げられる病院は2カ所のみだということがわかった。それも設備の整った私立病院には、早産といった緊急な対応はできない。そのため公立病院での出産を考えたのだが、藤阪はその病院を偵察に行った守田から驚くべき事実を伝えられる。
「平然と血まみれの患者が待っていたり、手術しているところの扉が開いていて外から見えたり。スタッフの人が血のついている作業服で作業していたりと、衛生的にも厳しい感じでバイオハザードの撮影現場を見ているようだった」
守田は止むなく立ち会い出産を諦め、藤阪だけが日本へ帰国し、出産することになった。
それから半年後に守田はスポルティングへ移籍。新たな移籍先はポルトガルの首都にあるクラブとあって環境面は充実していた。藤阪も生まれたばかりの長女と移り住み、夫をサポートしながら子育てに励んでいる。異国の地だけに「子育ての不安は感じている」と話すが、「あの島(サンタクララ)を一番最初に経験しているからこそ、今は天国です」と、アスリートの妻らしい頼もしさも窺える。
ピリピリW杯予選中「逆に生きている心地がする」
一方で、家族の存在、妻のサポートがあったことは言うまでもないが、守田が欧州の地での戦いに邁進できたのは、サッカーに対する圧倒的な自信があったからに他ならない。自分ならば現状を打開してもっと上のクラブに行ける、自分の実力ならば上に行けないわけがない。そう信じられるほど自分に自信があった。
「私はマイナス思考なところがあって、『試合で失敗したらどうしようとか思わないの』と聞いたことがあります。そうしたら『これまで練習をちゃんとしてきていれば、絶対に自分は力を出せるとわかっているから、あまり失敗したらどうしようと考えない』と言われました。それを聞いて、自分がこれまでやってきたことによっぽど自信があるからそう思えるんだなと感心しました」(藤阪)
W杯の出場権をかけた最終予選。一時は厳しい状況に追い込まれた時期もあっただけに、家庭にピリピリした空気が流れてもおかしくない。それでも藤阪いわく、守田は「W杯の出場がかかるような痺れる試合だから、逆に生きている心地がする」とその状況をあえて楽しんでいたという。
強靭なメンタリティーの持ち主である守田だが、普段は家でサッカーの話をすることはほとんどない。「本人が試合内容を話したいと思えば聞きますけど、あまり深く聞くこともない」とは藤阪の証言。代表に招集された後に誰とどういう話をしたといった小さな話はあれど、基本的に仕事のことを家庭に持ち込まないタイプのようだ。
だが、そんな守田がサッカーのことでひどく落ち込んでいたことがあった。それは代表活動での“怪我”だ。