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“邪道姫”と呼ばれた元女子レスラー・工藤めぐみ53歳が明かす、“なぜデスマッチを極めたのか”? 命の危険も「意識もうろう、呼吸ができず…」
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/11/11 11:01
現在53歳となった工藤めぐみさん。プロレスラーとして活躍した当時を振り返ってもらった
――それでも踏み込んだ。背中を押したものは、なんだったんですか。
工藤 大仁田さんの(最初の)引退があって、デスマッチ路線を封印して、新生FMWとしてスタートさせようとなったんですね。新しいものを作りあげていくことは必要だけど、今まで築きあげたものをゼロにはしたくないという気持ちがあったので、私にできることがあるのなら、この路線を究めていきたいなって思いました。
――否定的な意見はありましたか。
工藤 会場でみなさんの生の反応を聞きつつ、お客さんは何を求めてるんだろう、何を否定してるんだろうと考えながら、一歩一歩進んでいたんですけど、私の耳に賛否の否の声は届いてこなかったかな。もちろん、100%賛成ということはないけど、でも、後押ししてくれる声のほうが大きかったですね。対戦相手のシャーク土屋とは、通常のルールでは決着がつかないほどの遺恨が生まれたから、最後の最後まで行っちゃったんでしょうね。
命の危険を感じた試合「絞首刑されて、落ちちゃった」
――命の危険を感じた試合は、ありますか。
工藤 あります。いちばん怖かったのは神取(忍=LLPW-Ⅹ)戦(97年1月5日、後楽園ホール)。最後、後楽園ホールのバルコニーからチェーンで吊るされたんですけど、あのちょっと前に、チェーンでサードロープから絞首刑されて、落ちちゃったんです。あとで映像を観たら、完全に目を見開いてて、自分の知らない姿がそこにあった。意識もうろうで試合を続けてるんですけど、チェーンで宙吊りされて、呼吸ができなくなって、声が出なくて、タップすることもできない。ほんとギリギリで、なんとか意思表示できて終わったんですけど、限界を超えて、体が動かなくなるギリギリでした。試合で落ちたのは、初めてだったんですよね。あとはやっぱり、引退試合。
――試合後の控室に、焦げた髪のにおいがしたことを覚えています。
工藤 火炎を吹かれて、火が(長髪や水着に)燃え移ってしまったのは、今まで味わったことのない恐怖でしたね。最後は、髪も水着もボロボロ。当日、横浜アリーナの会場に入ってから、ファンの方から「今日はやられっぷりを観にきました」とか、「散り際でほんとにボロボロになるところを観にきました」って言われて、そのとき初めて、私ってそんな感じで見られてたんだと思いました(笑)。
――“FMWの工藤めぐみ”に求めていたのは、勝利ではなかったと。
工藤 そうみたいで、誰も私に強さとか格好良さを求めていなかった。言われたときは、「んっ? 最後にその言葉?」って思ったけど、それが私がFMWで生きた証……かな。
《つづく》
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