感じていた女子レスラーとしての葛藤

――大仁田さんの爆発的な人気は、女子部にどんな影響を与えましたか。

工藤　いい面と悪い面がありました。いい面は、女子の選手層が厚くなったこと。最初は、限られた人数で決まったカードしか組めなかったけど、入門者が増えて、一時は男子の選手より女子のほうが多くなった時期もありました。「女子の試合を観にきました」って言ってくださるファンも増えて、大仁田さんも「いまは女子がおもしろいよ！」と言ってくださって、女子部がどんどんいい方向に向かっているなと実感できましたね。

――反して、悪い面は。

工藤　大仁田さんの下であるという位置から抜けだせなくて。そのときに、「女子だけでメインを取りたい」という気持ちが沸いてきたんですね。女子が後半戦に向けて盛りあげていって、最後は大仁田さんが締める。「それがFMWのスタイルだから、これでいいと思います」と言う子もいたけど、それが当たり前になってはいけないし、女子がいつでもメインを取るという気持ちを失ってはいけない。いつ任されてもいいように、力をつけておかないといけないのに、それがうまくいかなくて。ほんっとに毎日毎日考えて、豊田と話をしてましたね。

――結果、工藤さんの引退試合が、FMW女子部初のメインでした（97年4月29日、横浜アリーナ）。

工藤　7年もかかってしまいました。女子プロレス団体の選手だと、ヘタしたらデビュー何カ月後かにメインに抜てきされちゃうでしょうけど、私たちの場合はメインイベントというものがほんとに遠くて。でも、それが励みにもなっていて。会場で、「今日の試合では女子がいちばん沸いた！」って思いながら、セコンドに付くんですよ。でも、最後にはやっぱり大仁田さんが何倍ものパワーで、ド～ンッと持っていってしまう。その繰り返しで、打ちひしがれるというか。

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過激化していくデスマッチに悩み

――引退試合は「ノーロープ有刺鉄線電流爆破バリケードダブルヘルデスマッチ」で、シャーク土屋さんが相手。デスマッチの最終形態といえますが、ここにたどり着くまで、どんどん激化していく過程ではどんなことを考えていましたか。

工藤　最初は、ビッグマッチや抗争の最終決着の手段としてのデスマッチで、一話完結で終わるものだと思ってました。その先のことは考えていなくて、慣れないスタイルに付いていくことで必死。周りの声も気にしてなかったし、自分自身が貪欲だった気がします。でも現実問題、回を重ねて、過激になっていって、有刺鉄線が出はじめたころからエスカレート。踏み込んでいいのか、悩みましたね。

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