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415kmレースのクレイジーなウラ側…“日本最速ランナー”土井陵は何を食べている?「カップラーメンもスイーツも食べない」「主食は柿の種です」 

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千葉弓子

千葉弓子Yumiko Chiba

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photograph bySho Fujimaki

posted2022/11/05 17:06

415kmレースのクレイジーなウラ側…“日本最速ランナー”土井陵は何を食べている?「カップラーメンもスイーツも食べない」「主食は柿の種です」<Number Web> photograph by Sho Fujimaki

土砂降りの中、静岡の大浜海岸でゴールする土井陵。「4日17時間33分」という驚異的な大会新記録でTJAR初優勝した

土井 天候などの条件がよければ4日12時間台でゴールできるのではと考えていました。ただそれはあくまで条件が揃ったときのことで、実際には5日切りをベースにしています。ドロップバッグに予備食料を多めに入れておき、そこで調整するつもりでした。

《先ごろ発表された『TJAR2022大会報告書』には、全選手の細かな装備、食料、行動が記されている。それによると、お湯で戻すアルファ米やカレーメシ、カップラーメンなどを携行する選手が多く、行動食としては柿の種やカロリーメイト、ナッツ、焼き菓子などが好まれている。

 何日にも渡るレースでは味覚も食感も飽きてくるため、麓の店で温かい食事やスイーツを食べることを楽しみにする選手も多い。そこには “心のご褒美” のような意味合いもある。食事はメンタルにも大きく繋がってくるからだ。しかし、土井にはそうした食品がほぼ見当たらない。》

――非常にストイックな食料計画で、気分転換になるような品が見当たらないのですが。

土井 ないですね。必携装備品としてバーナーを持っているので、アルファ米やカップ麺といった温かいものを食べる選手は多いんですけど、僕は食べませんでした。道具を準備して、火を使うと手間がかかりますから。それに食事の楽しさみたいなものはレース中は我慢できるんじゃないかなと。極端な話、ゴールしてから食べればいいくらいに思っています。栄養素は「日常」に近づけるために満遍なく摂りますけど、僕の中ではご褒美は必要ないということです。

――それでメンタルを保てるというのがすごいですね。天候や身体の痛み、眠気や幻覚などさまざまな要素が選手の心を揺さぶると思うのですが。

土井 もちろん、味や食感に変化があるならあった方がいいと思うし、アイスやプリンなども食べたくなったら食べるのがいいと思うんですよ。ただ自分はそこにフォーカスしていなかったというだけで。僕の最終的な目標はレースで最高のパフォーマンスをしたいということなので、必要な栄養素以外の食に対する欲求みたいなものは感じなかったです。むしろ、食事に惑わされたくなかったというか。

 僕はとにかく走っているときに気持ちの波をつくりたくないんですよ。しんどくなるので、ずっと安定させておきたい。レース中は余計なことを考えたくないんです。もちろん日常では違いますよ、美味しいものを食べたいし、食べること自体が好きなんで(笑)。

「普段はお酒もコーヒーも好きで飲みます」

――それを聞いて安心しました。レース前にカフェインやアルコールを控える選手が多いですが、そのあたりはいかがですか。

【次ページ】 「普段はお酒もコーヒーも好きで飲みます」

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