草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
2度のクーデターに相次ぐ襲撃、政情不安のブルキナファソになぜ? 中日・小笠原慎之介が野球不毛の地に道具を送った理由「僕は子供の頃から…」
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2022/10/22 06:00
今季プロ7年目で初の二桁勝利を挙げた小笠原。チャリティー活動への思いは真剣そのものだ
「だから、なんですよ。前から社会貢献活動には興味がありましたが、まずは自分が結果を残すことが先でした。ようやくそれができはじめたので、何かを始めよう、と。やるのなら野球に関することをしたいというのが僕の希望でした。国内も考えましたし、アジアも検討しました。でも、どうせやるなら誰かがやっていないことをやりたいな、と思ったんです。かといって、パイプがゼロだと寄贈すること自体が難しい。選手会の方々にも相談したところ、ブルキナファソがいいとご紹介を受けました」
四国アイランドリーグの高知や、北海道ベースボールリーグの富良野 には同国出身者が在籍しており、細いながらもパイプはつながっていた。「だからブルキナファソ」。こうして小笠原と野球不毛の地との縁はつながった。
「僕は子供のころから、人と同じ事をするのが嫌いだったんですよ」
プロ野球選手となった今でも、愛車を選ぶのにも球界内で人気の高いベンツには見向きもせず、独自の路線を貫く。スニーカーのコレクターとなったのも、人とは違う物へのあこがれが強いからだ。
「野球普及もやるならアジアよりアフリカ。東半球より西半球(厳密にはブルキナファソは国内を子午線が通過している)。そこから1人でも多くの人が野球を好きになってくれれば……」
「はだしでプレーしている映像を見て……」
貧困からボールを手にし、野球を始めるのは極めてハードルが高い。小笠原がそれを知る原点となったのは、2019年オフだ。自費でドミニカ共和国に飛んだ。球界屈指のメジャー通。多くのメジャーリーガーを輩出したドミニカ共和国の野球(ウインターリーグ)を見るだけでなく、自分の目でどんな国なのかを確かめたかった。
「プロが野球をやっている球場のすぐ裏で、プレーしている人たちもいました。石ころが転がっていて、道具もボロボロ。自分たちが普通に野球をやれていることが、どれほどありがたいかが身にしみてわかりました。それでも、ドミニカにはメジャーリーガーがいて、サポートしてくれる。それなら僕は違う国を……。今回、スパイクやシューズを多めにしたのは、はだしでプレーしている映像を見たからなんです。野球を楽しんでもらいたい。ケガをしてほしくないなって思ったから」