史上初となる2度目の春夏連覇を成し遂げた甲子園。小泉は打率2割6分3厘と、センバツに続き2割台だったし、打席では目立った活躍を見せたわけではなかった。それでも、チーム防御率は1.83とキャッチャーとして変わらず仕事を果たしたのである。

大阪桐蔭の経験は「人生の分岐点になりました」

　甲子園の扇の要として咲かせた月見草。22歳となった小泉は、高校時代の自分を面白い視点から回想する。

「西谷先生はもちろん、有友（茂史）先生、橋本（翔太郎）先生、石田（寿也）先生の下で野球をできた自分がすごく羨ましいなって。大阪桐蔭に来ていなかったら、これだけ野球を学ぼうって思えていなかったです。すごく誇りというか、人生の分岐点になりました」

　一時は大学進学を望んでいたが、西谷の勧めもあって卒業後は社会人野球のNTT西日本に入社した。4年目の現在も控えキャッチャーで、大学に進んだ選手やプロで揉まれる根尾、藤原たちに後れを取っているようにも見られがちだが、小泉に焦燥感はない。

「なかなか出てこないなって感じですよね」

　こちらが言いづらい質問をさらっと汲み取るように前置きし、こう続けた。

「力不足なのはわかってるんで。でもこの4年、得たものはたくさんありましたし、日々学ぶべきことは多いですからね」

　小泉は社会人野球でプレーするなかで、いかに基礎が大事なのかを再確認している。

　ゲームにおいて、キャッチャーのはじまりとは構えだ。足の幅や角度だけで何通りもある。そこから捕球位置やタイミングなど高いキャッチング技術を習得し、ワンバウンドのボールを受け止めるブロッキング、正確なスローイングへと段階を踏んでいく。

　地道でも着実に。小泉は、そんな社会人野球生活を送っているのである。

「何事も辛抱強く、我慢強くやっていくことは、人間力も大事になってきますからね」

　辛抱強く、我慢強く――これは西谷が取材などで頻繁に用いる言葉である。

「あ！　そうですよね。僕も無意識で言ってたんですけど」

　小泉に笑顔が弾けた。

〈つづく〉

#2に続く

中学日本代表・4番は大阪桐蔭で…「ストレスで15kg減」から最強世代のレギュラーをつかんだ日「『もう1回、桐蔭でやれ』って言われたら…」

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