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「正直、怖かった」朝倉未来の“狂気”をレンズ越しに見たカメラマンの証言…「ほぼ勝ち目なし」のメイウェザー戦に、それでも期待する理由
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph by©RIZIN FF Susumu Nagao
posted2022/09/23 17:03
カメラに向かってピストルを模したポーズをとる朝倉未来。この瞬間、撮影していた長尾迪氏は「ヤバい空気」を感じたという
レンズ越しに見た朝倉未来の“静かなる狂気”
私と朝倉は接点がなく、言葉も交わしたことがない。もちろん「こんにちは」の挨拶くらいはあるが、その程度だ。にもかかわらず、私は忘れられないことがある。
それはクレベル戦の記者会見で、最後に両者の2ショットを撮影した後のことだ。会場を去ろうとしている彼を呼び止めて、リング上で試合前にテレビカメラに見せるピストルを撃つポーズをお願いした。彼は私のカメラを真正面から見据え、ゆっくりと手を上げてゆき、ピストルのポーズが完成。その瞬間、私はズドンと撃たれた。わずか数秒間のことだったが、緊張が走り、「ヤバい」という空気になった。
正直に言わせてもらうと、私は怖かったのだ。もちろん、このときお互いに不遜な態度や失礼な言葉遣いは一切していない。ただ、レンズ越しではあったが、朝倉のくぐってきた修羅場の数、静かなる狂気が見えた。そして彼がいまも“常在戦場”の中で生きていることが伝わってきたからこそ、私は身の危険を感じたのだ。
2019年大晦日の試合前に、朝倉が地元・愛知県の少年院を訪問した映像が流された。夢を持つことの重要性を収監されている少年たちに説いた彼は、一人ひとりの将来の夢を聞き、その目を真っすぐに見つめて答えた。「叶います」「叶うと思います」「君の夢は叶う」……。彼らと同じ目線に立ち、エールを送る。そして「自分が叶えることができたので、みんなもできる。大切なことはブレないこと。自分が決めたことをやり通して、周りに流されないこと」などのアドバイスも付け加えた。
誰でも夢を叶えることはできる。ただ、それを実現させるためには戦略と実行力が必要だ。朝倉がYouTuberとして活動を始めたころ、彼は自らの身体を張り、リスクを冒しながら行動した。あるときは、街の不良たちに声をかけてガチンコ勝負。またあるときは、ぼったくりバーに客として潜入。いまでこそ似たような企画が数多くあるが、私が知る限り、朝倉はその先駆者と言えるだろう。だからこそ大きな注目を集め、一気に登録者数を増やすことができたのだ。