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「正直、怖かった」朝倉未来の“狂気”をレンズ越しに見たカメラマンの証言…「ほぼ勝ち目なし」のメイウェザー戦に、それでも期待する理由 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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photograph by©RIZIN FF Susumu Nagao

posted2022/09/23 17:03

「正直、怖かった」朝倉未来の“狂気”をレンズ越しに見たカメラマンの証言…「ほぼ勝ち目なし」のメイウェザー戦に、それでも期待する理由<Number Web> photograph by ©RIZIN FF Susumu Nagao

カメラに向かってピストルを模したポーズをとる朝倉未来。この瞬間、撮影していた長尾迪氏は「ヤバい空気」を感じたという

KO勝ちと読んだクレベル戦はまさかの結末に

 そんな朝倉も、RIZINで2度の敗北を経験している。最初は2020年11月21日、RIZIN初代フェザー級王座決定戦として行われた斎藤裕との試合で判定負け。当時の斎藤は修斗の現役世界王者で、8月の大会で華々しいRIZINデビューを果たしたばかりだった。

 私は所用のため、この試合を会場で撮影していない。動画で観たのだが、優劣をつけるのが難しい接戦だった。ただ、試合直後の両者の顔面を比較すると、勝者は朝倉のような印象を私は受けた。再戦は2021年の大晦日に行われ、全ての展開で斎藤を上回った朝倉の判定勝ち。文句のつけようのない内容で、前回と同じ轍を踏むことはなかった。

 2度目の敗北は2021年6月13日、14年ぶりに東京ドームで格闘技が行われた『RIZIN.28』。ボンサイ柔術の寝業師クレベル・コイケとの戦いは、この日のメインイベントだった。試合は1ラウンドから朝倉の打撃が炸裂。クレベルはスタミナも切れ、何度か倒すチャンスがあるようにも見えた。試合後のインタビューで朝倉は「相手はダウンしたことがないので、なかなか倒せない。深追いしすぎないこと」が作戦だったと明かし、また「目が死んでなかったから、行きすぎたらやばい」「これを続けていたら勝てる」と、試合は想定内で進んでいたと振り返っている。

 1ラウンドが終了した。私はインターバル中の両者の様子を見ながら、朝倉の打撃に全神経を集中させることに決めた。もちろんそれは、決定的なノックアウトシーンを撮るためだったのだが……。2ラウンド序盤、クレベルが組み付きながら朝倉をコーナーに詰めると、膝蹴りと肘打ちで攻め込みながら、強引に寝技に引き込む。マットに身体が付いた瞬間には三角絞めがセットされ、そのまま絞め上げて朝倉を失神させた。

 通常、コーナー付近はスペースが狭いので、関節技や絞め技は決まらないとされている。朝倉も「コーナーポスト付近のおごりがでた」と独特な言い回しをしたが、あの場所で決められるとは、クレベル陣営以外は、誰も想像していなかった。この結果に関しては、相手の役者が一枚上だったと言えるだろう。

【次ページ】 レンズ越しに見た朝倉未来の“静かなる狂気”

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