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「正直、怖かった」朝倉未来の“狂気”をレンズ越しに見たカメラマンの証言…「ほぼ勝ち目なし」のメイウェザー戦に、それでも期待する理由
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph by©RIZIN FF Susumu Nagao
posted2022/09/23 17:03
カメラに向かってピストルを模したポーズをとる朝倉未来。この瞬間、撮影していた長尾迪氏は「ヤバい空気」を感じたという
そんな光景を目の当たりにしても、「朝倉が強いのではなく、日沖の調子が悪かった。KO勝ちもラッキーパンチならぬ、ラッキーキックだったのだろう」「強い相手とやったら勝てないだろう」と私は思っていた。
試合運びに見る朝倉未来の“強さ”の本質
しかし予想とは裏腹に、朝倉はRIZINのリングで連勝を重ねていく。2018年の大晦日には、修斗元世界王者のリオン武を膝蹴りで倒した。翌年の4月にはブラジルの強豪、ルイス・グスタボに判定勝利。彼の強さは疑いようもなくホンモノであることを、ついに周りが認めはじめた。もちろん私も、自分の見る目のなさを自覚することとなった。
2019年5月にはYouTubeチャンネル『朝倉未来 Mikuru Asakura』をスタート。その反響は凄まじく、彼の名前は格闘技に興味がない人々にまで浸透していった。同年7月には、早くもRIZINのメインイベントを任されるようになる。この試合は朝倉が主戦場としているフェザー級(66kg)ではなく、対戦相手の矢地祐介が1階級上のライト級(71kg)で試合をしていることもあり、70kgの契約体重で行われた。試合は判定になったが、朝倉の完勝だった。矢地が得意とする寝技には付き合わず、自身が長けている打撃で勝負。最終ラウンドにはダウンも奪い、矢地に付け入るスキを与えなかった。
この試合を見てもわかるように、朝倉は冷静でクレバーな戦い方をする。事前に徹底的に動画などで相手の研究を行ない、癖や動きを分析する。このような情報収集のやり方は、インターネット上で無数の試合映像をチェックできるいまの時代に合っているのだろう。
ただ、彼の本当に凄いところは、試合中に相手の力量に応じて戦い方を変えることではないだろうか。朝倉は事前の分析と、実際に対峙した際の微妙な違いを瞬時に修正し、アジャストさせる。その上でベストな勝利の方法を見出してゆくのだ。この戦い方は一見すると簡単に見えるかもしれないが、並の選手ではなかなか難しい。さらに彼は、試合中にKOするのが難しいと判断したときには、誰から見ても優劣がはっきりとした判定勝ちをするようにマインドを切り替えている節もある。選手としては派手なKOで試合を決めたいだろう。しかし、無理にKOを狙えば負けるリスクが増え、怪我をする可能性も高くなる。
“確実に勝つことを選べる強さ”を、朝倉未来は持っている。