「おそらく一番大きいのは逆方向への意識を強く持つようになったことでしょうか。一軍に出たての頃は空振りも多かったし、強いスイングをすることに重きを置いていたのかな、と思います。最初は空振りしていた150kmを超える真っ直ぐがファウルになり、前に飛ぶようになり、ホームランを打てるようになった。その過程で体を開くことなく逆方向へ、という意識も高まったように見えます」

覚醒の要因2）ヤクルトならではの「先輩・後輩関係」

　フリーバッティングが終わりベンチ裏に戻ると、先に打撃練習を終えた青木宣親や山田哲人が声をかける。先輩後輩は関係なくお互いに気づいたことを言い合える雰囲気は、スワローズならではだ。

先輩後輩関係なく言い合える雰囲気もヤクルトの特徴だ ©Hideki Sugiyama

「練習の後に、ああだとかこうだとか、先輩たちと色々言い合っていますよ。青木や山田なんかはよく声をかけていて、いいアドバイスをしてくれていると思います。試合中も、あそこはこうだった、とか。コミュニケーションが取れているんですよ、ヤクルトって。今は村上も若い選手のバッティングをよく見ていますよ」

　佐藤さんは2004年にドラフト6位でヤクルトに入団し、11年に現役引退するまで左の中継ぎ投手として105試合に登板した。大きな体に眼鏡というその風貌は、人気を博した漫画「グラゼニ」の主人公である中継ぎ左腕・凡田夏之介のモデルでは？　と噂になったほど。愛嬌たっぷりの左キラーとして、燕ファンの記憶に残る存在だった。

佐藤賢打撃投手（40歳） ©HIdeki Sugiyama

バレンティンも担当…二人は「全然違います」

　引退翌年の12年から打撃投手に転向。すぐに来日2年目だったバレンティンを担当することになり、2013年にはプロ野球新記録となる60本塁打を放つ偉業をバックアップした。バレンティンと村上。左右2人のホームランキングを支えた“裏方版の名投手”だ。

「フリーバッティングに関しては二人は全然違います。バレンティンは引っ張り傾向が強くて、完全に自分の気持ちのいいスイングをしていましたからね。調子にもムラがあって、いい時は凄くいいけど、悪い時は全然……。でも村上にはそれが全くないです。疲れている時などに多少打球が上がりづらいことはあっても丁寧に打っていますよ」

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