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キック界の“那須川天心ロス”を癒やすのは誰か? 惜敗の原口健飛に辛勝の海人、かつて魔裟斗が放っていた「ホンモノのオーラ」を持つものは…
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph bySusumu Nagao
posted2022/09/09 11:01
鬼の形相でペットパノムルンを攻める原口健飛。昨年敗れたGLORY世界フェザー級王者相手に延長ラウンドまで奮闘したが、わずかに及ばなかった
「僕は負けていない」試合後の会見で熱くなった原口
もっとも、記者たちにはさらなる延長ラウンドが待ち受けていた。試合後の会見で、原口は「僕は負けていない」と結果に異論を唱えたからだ。「ミドルもヒジに当たっているだけで痛くない」「(スリップダウンした際に)首を絞められた」。原口の不満はペットパノムルンの攻撃から判定基準まで多岐に渡った。
この一戦に懸けていただけに、原口の気持ちはわからないでもない。「4R終了間際に原口が放った飛びヒザ蹴りがクリーンヒットしたのに」と敗者に同情する意見があったことも確かながら、シビアにいうと筆者の目には延長ラウンドだけではなく、本戦も1ポイント差でペットパノムルンの勝ちに映った。
会見で原口は判定について正式に抗議する意向も示していたが、最終的に取り下げた。クールダウンしたうえで自らの戦局を振り返ったら、第三者の意見を受け入れることができたのだろうか。我に返ることができてよかったと思う。判定に異を唱える場合、他の関係者やファンが見ても「原口の意見は理に適っている」という後押しが必要不可欠だ。
しかしながら、今回少なくとも筆者の耳に原口の意見に同調する声は聞こえてこなかった。もっというと、この一戦は世界タイトルがかかっているだけではなく、ポスト天心の査定試合でもあった。試合内容から「やっぱり天心の次にRISEの屋台骨を背負うのは原口だ」という声が自然発生しないといけなかったのだ。この男のポテンシャルは誰もが認めるだけに、再起に期待するしかない。
“70kg級国内最強”SBの逸材・海人は辛くも勝利
セミファイナルに出場した海人はサモ・ペティ(スロベニア)を相手に延長戦の末に判定勝ちを収めたが、笑顔はなかった。ペティは過去に日菜太や城戸康裕を撃破している日本人キラーだったが、1R早々海人にダウン寸前まで追い込まれた。しかし2R以降尻上がりに復調し、3Rになると海人を追い込む場面も。果たして試合は延長戦に突入するが、2分過ぎに海人はボディに集中放火を浴びせ、粘るペティに引導を渡した。