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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「クレイジーなパスだった」久保建英が完璧なスペイン語で表現!「彼はセスクを連想させる選手」《バスク在住英国人のクボ評》
text by
フィル・ボールPhill Ball
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/09/02 17:02
ソシエダのファンとともに写真を撮る久保建英。新天地で本来の輝きを取り戻せるか
「ゴールを別にすれば、私が一番気に入ったのは運動量の豊富さ(献身的なプレー)だ。 彼は我々と共に活動するようになった初日から、このような姿勢を見せてきた。まるで何年も前から、チームに所属しているかのようにね。彼にとっては、素晴らしい選手たちに囲まれていることもプラスになったと思う」
リーガ最強を誇る豪華な中盤
「素晴らしい選手たち」とは、ダイヤモンド型の中盤を構成する面々を指す。
現在、ソシエダの中盤にはダビド・シルバ、スペイン代表のミケル・メリーノ、マルティン・ズビメンディ、そしてセルタから加入したばかりのブライス・メンデスというトップクラスの選手が名を連ねている。ダビド・シルバについては改めて説明するまでもないだろうし、ズビメンディもブスケッツの後任として、バルサから声がかかっているほどの逸材だ。贔屓目抜きにしても、ソシエダの中盤は、ラ・リーガの中で最高の陣容を誇っていると言っても過言ではない。これは久保にかかる負担を軽減しつつ、能力をより発揮できるようにする効果も持つ。それが故にこそ、彼は貴重な決勝点を奪うことができた。
だが聡明な久保は決して舞い上がらず、監督のアルグアシルと同じようにチームワークを強調している。試合後には、自分がゴールを決めることができたのは、チームメイトのメリーノが中盤から極上のパスを出してくれたからだと指摘。完璧なスペイン語で「Fue un pase de locos(クレイジーなパスだった)」と表現した後で、「最高のデビュー戦となった」と締めくくった。
さらに久保はピッチ外でも、チームワークを重んじるバスクの流儀に倣ってみせた。試合終了後には、サン・セバスチャンから1000キロも離れた場所まで遠征してくれた1200人のファンの近くに歩み寄り、日本式のお辞儀をして感謝の気持ちを示したのである。
バルサ戦でも際立ったプレー
かくして久保はデビュー戦で強烈なインパクトを与えたが、真の意味で信頼を獲得し、クラブの一員となっていくためには、コンスタントにパフォーマンスを披露していくことが重要になる。この点でも現状は申し分ない。1週間後に行われた第2節、シーズン序盤の大一番とも言えるバルサ戦でも、前半に際立ったプレーを見せたからだ。
カディス戦同様、アルグアシル監督は久保を中盤のダイヤモンドの前方、センターフォワードを務めていたアレクサンダー・イサクの直後に配置した。
これは久保にとっては良い兆候であり、チーム事情にも適っていた。近年、ソシエダは質の高い選手を育成してきたものの、なぜかこのポジションだけは適任が見つかってこなかった。以前はウィリアン・ジョゼという選手が、セカンドストライカー的なポジションを務めたケースもあるが、本職ではないだけにチームは今ひとつギクシャクしていた。