- #1
- #2
欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「クレイジーなパスだった」久保建英が完璧なスペイン語で表現!「彼はセスクを連想させる選手」《バスク在住英国人のクボ評》
text by
フィル・ボールPhill Ball
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/09/02 17:02
ソシエダのファンとともに写真を撮る久保建英。新天地で本来の輝きを取り戻せるか
その穴を埋めたのが久保に他ならない。以前に所属していたクラブでは、右サイドから切れ込み得意の左足で勝負するパターンが多かったが、彼はピッチの中央で、自由に攻撃に絡むスペースを与えられてこそ持ち味を発揮する。ソシエダのフットボールディレクターであるロベルト・オラベも、攻撃陣に不可欠な「media punta(トップ下)」として獲得に動いたのは明らかだった。
セスク・ファブレガスの系譜に連なる選手
久保はソシエダへの移籍を境に、「entre lineas」(敵の中盤とディフェンスラインの隙間)を突ける選手としても、スペインメディアから改めて注目を浴び始めた。「entre lineas」とは敵のディフェンダーを背負いながらボールをキープし、左右に流れたり縦方向への突破を図ったりしながら、決定的なチャンスを創り出せる能力を指す言葉で、スペインのサッカー界では特別な選手を指す際に用いられてきた。
具体的にはセスク・ファブレガスなどを連想してもらうのが手っ取り早いかもしれないが、久保はまさにバルサのカンテラ時代の先輩と同じように、ピンポイントのラストパスを出せるだけでなく、必要とあればカディス戦のように自らゴールを奪うことができる。しかもスピードとアジリティが高いだけに、敵のディフェンダーにとってはきわめてやっかいな存在になっている。
2戦連続でソシエダのベストプレイヤーに
事実、バルサ戦ではこのような長所が随所で発揮された。トップ下の資質に優れているだけでなく、運動量も豊富な久保は、敵ディフェンダーのエリック・ガルシアとアンドレアス・クリステンセンを手こずらせ続けたし、守備を通じてチャンスを創り出す芸当も披露した。イサクは試合開始6分、ガルシアのマークを振り切って同点ゴールを決めているが、これは久保がバルサのミッドフィルダー、フレンキー・デ・ヨングにプレッシャーをかけ、ビルドアップの途中でボールを奪ったプレーが起点になった。
たしかに久保は 27分にはシュートを外してしまっている。だが、その代わりにダビド・シルバのためにチャンスもお膳立てしている。そして最終的には、アンス・ファティのようなバルサのカンテラ時代の仲間を相手に自らの成長ぶりをアピールし、2戦連続でソシエダのベストプレーヤーとなったのである。
ソシエダは今シーズン、ヨーロッパリーグでの上位進出を狙う一方、国内のリーグ戦でもチャンピオンズリーグ出場枠に食い込もうとしている。この2つの目的を達成する上で、久保は重要な役割を担うことになる。かくもチームから重用されるのは久保にとっても本望だし、ワールドカップでコスタリカ、ドイツ、スペインと同じグループEに入った日本代表にとっても朗報だろう。ソシエダのチームメイトであるメリーノやズビメンディはすでに代表に名を連ねている。ソシエダの守護神であるアレックス・レミロも、大会に向けて招集される可能性を残している。