オリンピックへの道BACK NUMBER
「500通の感想メールが…」ラジオで“異例の羽生結弦特集”を実現させたアナウンサーが感じた“ファンとの絆”「あたたかさに感動しました」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byL)Tomosuke Imai、R)JMPA
posted2022/08/31 11:00
羽生結弦特集の番組を作り上げ好評を呼んだラジオNIKKEIアナウンサーの藤原菜々花さん
サプライズで選んだ『R』と『水平線』に込めた思い
リスナーからのリクエストと藤原の思いを掛け合わせた本編とは別に、番組ではオープニングとエンディングを設けていた。オープニングに使用されたのは仙台を拠点に活動していたHi-Fi CAMPの『R』、エンディングはback numberの『水平線』だった。オープニングとエンディングはリクエストからではなく、藤原自身が選んだ。
「『R』は羽生選手が(2011年の)東日本大震災のときに特に力をもらったとおっしゃっていた曲です。震災が羽生選手のスケート人生が大きく変わったターニングポイントかなと個人的に思っていたので、『R』で始めました。エンディングにした『水平線』については、北京オリンピックシーズンの中で力をもらったのが『水平線』だと羽生選手がおっしゃっていました。羽生選手が震災のときに支えられた曲で始めて、直近の北京で元気をもらった曲で絶対終わらせたいと思ったんです。
特にオンエアの中ではその話はしなくて、『この曲はHi-Fi CAMPでRでした』とアーティスト名と曲だけ紹介しました。実は意図があって選びました、ということに、おひとりでも気づいていただけたら、と伏せた状態でオンエアしたところ、お便りやツイートで気づいてくださる方がたくさんいらっしゃって。思いが通じたんだ、とすごいうれしかったです」
「羽生選手のファンのあたたかさに感動」
番組は収録で行われた。心がけたのは「羽生選手が滑っていない箇所でナレーションを入れて、お便りを読むということ。滑っている箇所は、ファンの方々が音楽だけを聴いて羽生選手を思い浮かべたい箇所なのかなと思いました」。
放送前は、プレッシャーものしかかった。
「こういう企画をやります、お便り募集します、というツイートを投稿すると、瞬く間に拡散されて、最初はすごくうれしかったんですよ。フィギュアファンの方々がつないでつないで、多くの方に知っていただけるのはうれしいなと思っていました。ただ、リツイートが増えるたびにどんどん胃が痛くなってしまって。皆さんが期待して楽しみにしてくださっているのがうれしい反面、失敗したらどうしよう、絶対いいものにしなきゃ、とちょっとナーバスになった時期もありました。でも皆さんの声があったからこそ、頑張れた企画でもありました。
番組がオンエアされたときは私もリアルタイムで聴いていました。『#こだわり羽生結弦選手』でツイートしていただいたツイートを見ながらです。マイナスのコメントがあったらどうしようと思っていたら、私が目にした限り1つもなくて。『涙腺が崩壊してバスタオルがないと無理だ、ふつうのハンカチじゃ足りない』というツイートがあったり、『作ってくださった方の愛にあふれた番組でした』とあったり、羽生選手のファンのあたたかさに感動したというのと、この番組をやってよかったなと思いました」