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「500通の感想メールが…」ラジオで“異例の羽生結弦特集”を実現させたアナウンサーが感じた“ファンとの絆”「あたたかさに感動しました」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byL)Tomosuke Imai、R)JMPA
posted2022/08/31 11:00
羽生結弦特集の番組を作り上げ好評を呼んだラジオNIKKEIアナウンサーの藤原菜々花さん
『SEIMEI』再現にはこんな苦労が…
いざ選曲を進めてみると、いくつもの困難にぶつかった。
「いちばん大変だったのが権利関係です。そもそも流せない曲もあり、曲としては流せるけれど羽生選手が使っているタイプだと流せないこともありました。ほんとうは流したかったんだけど流せない、という曲もたくさんありました」
それを踏まえて曲を選んだあとも簡単ではなかった。
「『SEIMEI』は、50曲ある『陰陽師』のサウンドトラックから羽生選手がいくつかをチョイスして編集されているんですね。羽生選手が使用した形そのままで流すのは難しいため、清水ディレクターと協力して、どのトラックを使用しているのかをみつけて、できる限り羽生選手の編集に近づけようとしました。
ただ、放送局は編曲をしてはいけないんですね。編曲と言われない範囲内で、例えば1つのトラックから次のトラックに行くときはフェイドアウトで行くようにして、放送局ができる限りのところで再現しました」
「中途半端に流すくらいなら…」明かした葛藤
セットリストに含まれた2016-2017シーズンのフリープログラム『Hope&Legacy』も腐心した1つだ。
「このプログラムは久石譲さんの2つの曲が組み合わさっていて、久石さんの1曲を半分にして、その間にもう1曲入れて編集されています。それを再現するために、最初の曲をフェイドアウトして、2曲目を流して、もう1回最初の曲の続きから……という手法でやろうと思っていました。
ただ、調べてみると、羽生選手が編集し、久石さんに許可をお願いした際、最初は却下されたのを頼み込んで許可してもらったという記事をみつけて、『羽生選手ですらそうなら、私たちはできないよね』と。ではどちらの曲を流すのか、中途半端に流すくらいならそもそも流さない方がいいんじゃないか、でも絶対流したい、みたいな葛藤がありました」