「素材という部分では、今年の高校3年生で最も可能性を感じる投手は日本文理の田中投手です。体格（身長186センチ、92キロ）に恵まれ、柔らかさもあります。指にかかった時の直球は惚れ惚れします。京都国際の森下投手も直球の質が高く、変化球を含めて完成度が高い投手です。今大会はコンディションが万全ではなく、試合後は涙もなく笑顔でした。無茶をするのではなく、今できるベストを出す割り切った考え方ができるのは、長いシーズンを戦うプロ向きと感じました」

日本文理・田中は素材面から非常に高い評価を受けている　©JIJI PRESS

　パ・リーグのスカウトも2人の投手が今秋のドラフト対象となる高校生の中で、トップレベルにあると認める。ただ、不安要素を指摘する。

「森下投手の左肘の状態が気になります。故障明けだったこともあるのか、フォームに躍動感がありませんでした。怪我そのものの影響、さらに怪我をかばってクセが付かないのか心配があります。田中投手は指の皮がむけたそうですが、昨夏や今春の公式戦からの成長を期待していたほど感じませんでした。どちらの投手も状態が万全ではなかったのは仕方ありませんが、近江の山田投手のような勝ちへの執着を見せてほしかったと個人的には思っています」

「原石かもしれない」という最速148キロ腕の名は？

　2人への期待値が高いだけに、やや物足りなさを感じたと話すパ・リーグのスカウト。ドラフト上位候補と断言できる高校生が少ない中で、「原石かもしれない」と目を奪われた選手もいた。

　富島の日高暖己投手である。

県立高・富島の日高は「原石」として評価するスカウトも　©JIJI PRESS

　身長184センチ、体重77キロ。細身の体から投じる直球の最速は148キロ。カーブ、スライダー、フォーク、チェンジアップと変化球も多彩だ。初戦の下関国際戦では不運な当たりもあって5点を失ったが、9つの三振を奪った。パ・リーグのスカウトは、こう評する。

「直球の回転が非常に素晴らしいです。落ちるボールとの組み合わせも効果的で、昨夏の県大会の時から急成長していました。指先の強さと器用さを感じさせる投手です。闘志を内に秘めて、ひょうひょうと投げる姿も良かったです。体つきも投球フォームも、まだまだ未完成なだけに、大きく化ける可能性があります」

　プロ野球のドラフト会議は10月20日に予定されている。長い時間をかけて多角的に選手の能力や将来性を見極めるスカウトにとって、夏の甲子園は判断材料の1つ。だが、重要な機会だったのは間違いない。

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