甲子園の風BACK NUMBER
セパスカウト“甲子園で称賛+評価が割れたドラフト候補6人”「山田陽翔の育成できない才能」「化ける可能性がある148キロ腕」とは
text by
間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/08/27 06:00
甲子園で躍動した近江・山田陽翔。スカウト視点で今夏の成長とともに「スター性」にも注目している
「知識や技術を習得するためには、自分よりも上手い選手から学び、まねることが一番の近道です。大阪桐蔭が強い理由は個々の能力にもありますが、1年生から3年生と一緒に練習メニューをこなす環境にもあります。見本になる選手がいれば、自分に何が足りないのかに気付き、目標に近づくために何が必要なのかイメージできます。
一方、山田投手は投打どちらとも、チーム内で圧倒的な存在です。自分が断トツの状況で力を伸ばすためには、自分を客観的に見る力、向上心、目標設定など、高いレベルで非認知能力が求められます。そして、プロで成功できるかどうかの要素には、非認知能力が大きく関わってきます。身体能力だけではプロの第一線で戦えません」
山田投手が自ら考えて能力を伸ばしてきたところに、プロの資質を見出している。
もう1つ、プロ向きと考える理由は、観客を惹きつける人気の高さだ。夏の甲子園で最もファンが多かったのは山田投手と言って異論はないだろう。誰よりも大きな拍手が送られ、ブルペン投球が“大撮影会”と化したのは山田投手の他にいない。パ・リーグのスカウトは「人を惹きつける魅力がある」と話す。
「プロ野球はファンの存在なくして成り立ちません。人に愛される選手は育成できない部分で、山田投手の長所、才能でもあります。海星戦で試合を決める満塁ホームラン、破れた下関国際戦で最後の打者になるめぐり合わせにもスター性を感じました。プレーを見たいと思わせますし、何かやってくれるという期待感を持たせてくれる選手です」
大阪桐蔭の捕手・松尾も大きく評価を上げたワケ
評価を大きく上げた選手の2人目は、大阪桐蔭の松尾汐恩捕手。
スカウトは「打力のある捕手は、どの球団もほしい」と口を揃える。昨夏の甲子園は2年生で唯一スタメンに入り、ホームランも放った。今春、今夏は3番打者として強力打線の中心に座った。夏の甲子園では聖望学園戦で2本の本塁打を放つなど、打率.571(14打数8安打)。長打力と確実性、チャンスでの強さを見せた。セ・リーグのスカウトが打撃の成長に挙げたのは選球眼だった。
「今大会では難しい球に手を出す場面が減りました。打つべき球を確実に捉えている印象です。フォアボールを6つ選んだ数字にも表れています。2ストライクになってからは厳しい球をファウルしていましたし、より打ち取るのが難しい打者になったと思います」
パ・リーグのスカウトも球の見極めに対する変化を感じていた。強引さがなくなり、スイングのスピードと強さを生かす打撃になっていたという。