「力むとトップが入ってしまう悪い癖は、ほとんど見られませんでした。元々、内角を苦にせず、強く引っ張る打撃が魅力の選手ですが、場面に応じて逆方向を意識する打ち方もできていました。下関国際の仲井慎投手に三振を喫した打席を除いて、外角の変化球に崩されることはなかったので、相手バッテリーは投げる球がなかったと思います。

　捕手の経験が生きているのか、打席で配球を読んで確信を持ってスイングしている場面もありました。キャッチングでミットが動く点は課題ですが、ショートからコンバートされて年数が浅いので今後改善していけば良いと思います」

捕手としてのプレー期間はまだ短く、松尾の伸びしろと言えるかもしれない　©Nanae Suzuki

浅野翔吾は高校生にして「弱点がないのが強み」

　最後の1人は、高松商・浅野翔吾外野手。

浅野が山田から放った本塁打の豪快なスイング。プロスカウト視点でも衝撃を受けたという　©Hideki Sugiyama

　今大会は3試合で3本のホームランを放ち、打率.700（10打数7安打）、6打点、出塁率.800、長打率1.800と驚異的な数字を残した。セ・リーグのスカウトは「詳しく説明する必要はないでしょう。世代ナンバーワンの打者です」と笑う。驚かされたのは、ホームランの内容だ。

「近江の山田投手から打ったバックスクリーンへの一発は、金属バットとはいえ、見たことのない弾道でした。あれだけの飛距離をライナーで出せるのは、投球のラインにバットを入れて芯に当てる技術、力の抜き方とインパクトの力の入れ方、直球の威力を利用できるスイングスピードとスイングの強さなど、あらゆる要素が必要です。他の2本はレフト方向、ライト方向とセンターを意識しながら、投球によって打ち分ける高い技術も持っています」

　パ・リーグのスカウトは「弱点がないのが最大の強み」と評する。今大会の成績や高校通算67本塁打といった目に見える数字以上に、投球の見逃し方に能力の高さが詰まっていると表現する。

「浅野選手は直球に立ち遅れることも、変化球に崩されることもありません。打席で間が取れているためです。力を十分にためてバットを振っているので飛距離が出ます。スイングスピードも速いのでポイントを近くして投球をギリギリまで見極め、ボール球に手を出しません。木製バットになり、投手のレベルが上がるプロではホームラン量産とはいかないかもしれませんが、バットの芯に当てる技術は高いので、木製バットへの対応には苦労しないと思います」

浅野は高校生にあって“穴のなさ”を特徴と挙げられるのも珍しい　©Nanae Suzuki

スカウトによって評価が分かれたドラフト候補たち

　夏の甲子園で評価を上げた選手がいる一方、スカウトによって評価が分かれたドラフト候補もいる。日本文理の田中晴也投手と京都国際の森下瑠大投手の2人だ。ともに高校最後の舞台で本来の投球を披露できず初戦敗退となったが、セ・リーグのスカウトの評価はぶれていない。

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