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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
大谷翔平はなぜエンゼルスを選んだのか? 米番記者が明かす獲得レース舞台裏…衝撃のヤンキース選考外「明日2時間、大谷と会える」
text by
ジェフ・フレッチャーJeff Fletcher
photograph byGetty Images
posted2022/08/26 11:01
7つの候補球団からエンゼルスを選んだ大谷翔平。当時のGMの証言をもとに、ジェフ・フレッチャー記者が舞台裏を明かした
球界全体は大谷の考えを好き放題に推測していたが、一方でCAA(クリエイティブ・アーティスツ・エージェンシー/代理人ネズ・バレロが所属)は素早く会合を設定していった。エップラーは日曜日に、「明日2時間、大谷と会える」という返答を受け取ったことを明らかにした。その時点でエップラーは正確な予定までは把握していなかったが、大谷は月曜日に3球団と、もう3球団と火曜日に、そして最後の1球団と水曜日に面会することになっていた。
これだけの過密日程になると、再びエップラーとスタッフ一同が徹夜の日々を送るということだ。与えられた時間は限られ、通訳を挟む会話はさらに時間が限られることになる。
エップラーは、13分間の動画を大谷に見せることを予定していた。
残りの時間を使い、書面のプレゼンテーションで明かした条件をあらためて強調し、大谷側の反応を聞くことにしていた。そこで、エンゼル・スタジアムのオフィスで“予行演習”を行い、できるだけ明確なメッセージを伝えられるよう、大谷が聞きそうなことすべてに答えられるよう準備を重ねた。
ドジャースはカーショウを呼び出し…
ほかの6球団も似たような準備をしていたことは確実で、何球団かは大谷を呼び込むために選手まで動員した。
ドジャースの大エースであるクレイトン・カーショウはテキサスでの結婚記念日から呼び出され、三塁手のジャスティン・ターナーは自身の結婚式へ向けて準備していたところを中座させられた。
カブスはアイビー・リーグ出身の知性派投手のカイル・ヘンドリックスを動かし、大谷に親しみを覚えさせようとした。また、バーチャルリアリティを使って試合のシミュレーションを組み立てるテクノロジーも披露し、呼びかけようとした。
ほとんどの場合、面談の大部分はいかにしてチームを大谷に売り込むかという一点に終始し、大谷と一同はほとんど聴くだけだった。しかし、少なくともうち2球団は、大谷が明らかにDH制度のあるアメリカン・リーグに傾いていることを感じ取った。外野や一塁を守るより、指名打者として試合に出るほうに馴染んでいるからだ。
「DHとして試合に出るほうが外野手をやるよりも慣れているし、最近は外野を守っていないからとあちらも言っていたよ」
サンフランシスコ・ジャイアンツのブルース・ボウチー監督が、この数カ月後に振り返った。
カーショウはこの数カ月後に振り返ったときもあまり機嫌がよくなさそうで、面談は「単なる時間の無駄でしかなかった」と吐き捨てた。
「あいつは、明らかにDHでやりたがっていたからな。オレは、関係者全員の時間を無駄にさせたあいつの代理人にある意味ムカついてるんだ。最初から、15球団はさっさと撤退しとけばよかったんだ」