「右打者に対してチェンジアップが多いのは、選手コーチの分析で分かっていました。（3番打者の）渡辺はいい打者なので、初球はチェンジアップで入ってくると思って、投手が足を上げた瞬間にスタートしました。チェンジアップの握りなら、けん制もしてこないと考えていました」

　ギャンブルとは程遠い冷静な分析。右打者の3番・渡辺升翔選手は、2回戦で3安打を放っている。浅野選手は、相手バッテリーが初球にチェンジアップを選ぶと読んだ。そして、予想通りのチェンジアップ。捕手が二塁への送球体勢に入った時、すでに浅野選手は二塁ベースにスライディングをしていた。

イチローから伝授された「静かなリード」を心掛けて

　九州国際大付属の香西投手の投球は、動画で前日も確認していたという。フォームの特徴も頭に入っていた。さらに、リードの取り方は元マリナーズ・イチローさんからのアドバイスを生かした。昨年12月、イチローさんがチームを訪れて直接指導を受けた際、「跳ねながらリードせず、インパクトに集中するために静かにするように」と伝授された。浅野選手は、この試合でも「静かなリード」を心掛けていた。

リードする浅野　©Nanae Suzuki

　注目された打撃では4打席でヒットは内野安打の1本。デッドボールとフォアボールで1度ずつ出塁した。数字だけ比較すれば2本のホームランを放った2回戦より物足りないが、浅野選手は冷静に分析した。

「自分の中で長打を狙うとフォームが崩れて、いい結果にならないと分かっています。センターから右方向へ強い打球を飛ばすことを意識すれば、自然と結果が出ると思っています。ホームランを狙わず、出塁を目標にしています。あまりストライクがこなかったので、自分の打席がよかったのか悪かったのか分かりません」

「浅野選手が相手投手に圧力をかけた結果」とは

　観客が待ち望んだ豪快なホームランは生まれなかった。だが、スカウトの評価は揺るがない。浅野選手の強みが出ていたと指摘する。

「打席での見送り方が非常に良いです。バットを振らなくても相手投手に圧力をかけていました。スイングすべきボールに反応できていました。選球眼の良さは浅野選手の特長です」

　この試合、浅野選手がスイングしたのは4打席で3回だった。1打席目は4球目を内野安打。2打席目は2球目にデッドボールとなり、一度もバットを振っていない。3打席目はカウント3ボールから真ん中付近にきた4球目の直球をファウル。4打席目は2ボール1ストライクからライトフライに倒れている。スカウトは「内容が濃い4打席でした」と評価する。

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