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甲子園の風BACK NUMBER
“イチロー流な走力”の世代最強スラッガー浅野翔吾 スカウトが“ドラフト上位級”とホレる4つのセンス〈打撃は吉田正尚・平田良介型〉
text by
間淳Jun Aida
photograph byNanae Suzuki
posted2022/08/17 17:05
豪打でドラフト目玉候補となった高松商・浅野翔吾。プロ野球スカウト視点では打力以外の面にも注目しているという
「内野安打とライトフライになったボールは少し打ち損じた印象がありますが、スイングすべき投球でした。この試合でヒットになる確率が高いというボールは、この2球だけです。3打席目はデッドボールを受けた直後の打席だったことから外角に狙いを定めながら、ボール球には手を出しませんでした。フォアボールは、浅野選手が相手投手に圧力をかけた結果です。3ボールからのスイングを見て、投手は甘いボールは投げられないと感じて、5球目は大きく外れてしまいました」
「打席での雰囲気がすごくて…」
九州国際大付属の香西投手は、浅野選手の威圧感に本来の制球力を欠いた。対峙した3打席を振り返る。
「緩急も内外角への投げ分けも、全てを使って勝負しようと臨みました。打席での雰囲気がすごくて、デッドボール、フォアボールとなってしまいました。内角、外角どちらも長打を打たれる雰囲気がありましたし、どんなボールにも対応されそうと感じました」
浅野選手に決定的な仕事はさせなかった。しかし、簡単にはアウトを取れず、塁に出しても気を抜けない打者だった。センターの守備でも走力を生かして素早く落下点に入り、最も難しい正面へのライナーにも難なく対応。走攻守で高いレベルにあると改めて証明した。
元プロ野球選手で、引退後は楽天・西武で編成部長やスカウト部長を歴任した九州国際大付属の楠城徹監督も「走塁と守備でもセンスの良さをすごく感じましたし、何よりチームを引っ張っていく姿勢が全面に出ていて、頼もしさがありました」と称えた。
身長170センチも「全く気にしない」打力
浅野は3回戦でも自らの価値を上げた。ただ、やはりスカウトが惚れるのは打力だ。
2回戦の佐久長聖戦は、第3打席で外寄りの直球を広い甲子園の右中間スタンドまで運んだ。浜風に戻されないパワーを見せつけた。続く打席では、甘く入ったスライダーを引っ張って、ホームランとした。身長170センチの体格からプロでの活躍に疑問を投げかける声がある中、このスカウトは「全く気にしていません」と一蹴する。
イメージを重ねるのは、中日の平田良介選手とオリックスの吉田正尚選手だ。