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「ヤカンの水をかけて…今なら本当にダメ(笑)」「僕、1回逃げ出したことが」前園真聖と松井大輔が忘れない“鹿実での地獄な青春”
text by
粕川哲男Tetsuo Kasukawa
photograph byMasakazu Yoshiba
posted2022/08/11 11:03
鹿実時代のユニフォームを持つ松井大輔と前園真聖
前園 厳しさだけだったら、鹿実からこれだけ個性的な選手が出てくるはずがない。
松井 本当にそう思います。選手権、ゾノさんは3年連続で行ったんですか?
前園 うん。
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松井 すごいですね。
前園 鹿実しかいなかったからね。1年のときベスト8、2年のとき初めて国立に行って国見に負けて準優勝。3年のときは優勝候補と言われたけど、四中工(四日市中央工業)と両校優勝した帝京に準々決勝で負けたんだよ。
松井 僕たちは決勝で市船に負けました。市船はイタリアみたいに相手の良さを消して、FKとカウンターで勝負を決める。最後に勝つのは戦術を持ったチームなんだって思った。あの敗戦が生きたかどうかわからないですが、プロに行ったらこの市船のメンバーよりも絶対に活躍しようと、強く思いました。
「みんながプロに行けるわけじゃないからね」
前園 高校サッカーは特別。俺の場合3年間しか一緒にやれないメンバーと最後っていう寂しさもあったけど、プロ化の話があったので、プロになってどう活躍するかってことを考えてたかな。終わったら次って感じ。そういう時期だった。
松井 僕は京都サンガに決まってたんですけど、それでも国立に行って優勝することだけを考えていました。すべての高校生が持つ大きな目標、選手権で優勝するっていう目標に向かってみんなで走っていたあの時期は、すごくよかったと思う。そのために、誰よりも上手くなりたいと思ったし、メンタルも強くしないといけないと思った。一つひとつ階段を上っていく必要があって、そこで踏ん張れたからいまがある。