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現役生活に“一区切り”…女子体操の立役者・杉原愛子22歳はいま何してる?「練習と学生の指導も。コーチの大変さを実感しています」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAsami Enomoto/Getty Images
posted2022/08/08 11:00
現役生活に区切りをつけた杉原愛子。現在の生活や2回出場したオリンピックの思い出などについて聞いた
高校1年で日本代表に…トップであり続けた7年間
杉原といえばやはり五輪に2度出場したことが体操人生のハイライトになる。日本代表としてデビューしたのは高校1年生だった2015年。個人総合で競うNHK杯で優勝して世界選手権の代表入りを果たし、その年はアジア選手権で団体と個人総合の2冠に輝いた。
村上茉愛や寺本明日香らとともに出場したリオ五輪では、メダルまであと一歩の団体4位。東京五輪は団体5位だったが、3位との点差はわずか0.816点だった。あまり語られてこなかったが、リオ五輪があった2016年から2021年の東京五輪までの間、一度も欠かすことなく世界選手権や五輪に出場し続けたのは杉原ただ1人だ。
「2015年から7年という長い間、代表としてトップでいるというのは誰にでも出来ることではありません。本当にたくさんの人にサポートされたお陰だと感じています」
大好きなNissyの曲で演技した東京五輪
周囲への感謝を重ねて口にする杉原だが、支えてもらえた理由は杉原自身がやるべきことをやり、耐えるところを耐え、時に自ら行動を起こして夢をつかみにいく姿を見せてきたからだろう。
その象徴であるのが、東京五輪や今年6月の全日本種目別選手権で披露したゆかの演技だ。以前から「AAA(トリプル・エー)」の「にっしー」こと西島隆弘の大ファンである杉原は、「AAA」の振付を担当するkazukiさんにSNSのDMを通じて自力でコンタクトを試み、ゆかの振り付けを依頼した。その後、Nissyの曲「NA」をゆかで使うことが実現した。
衣装は羽生結弦のコスチュームを担当する伊藤聡美さんに制作を依頼した。すべてダメ元でもという思いで願い出たことだが、熱意が伝わった。事務的なやり取りは体操部の大野和邦監督がサポートした。
先輩・寺本が鬼になった日「死ぬ気でやりな」
つねに楽しむことをモットーとしている杉原だが、実際は何度もド根性を見せてきた。大会直前の合宿で左足首をねん挫して迎えた2019年世界選手権では、東京五輪の団体出場権獲得のため、痛みをこらえて演技をした。主将の寺本明日香が「死ぬ気でやりな」と鬼になった大会だ。
「日の丸を背負う選手でいる限り、団体の出場枠を取ることが仕事であり、役割であるという覚悟がありました。しかも自国開催の五輪。寺本さんはカツを入れる意味で『死ぬ気で』という言葉を選んだのだと思います。『やらないとあかん』と思いました」
杉原は、足首に負担のかかる跳馬の着地で顔をゆがめながらもしっかり点を稼ぎ、日本はギリギリのところで東京五輪の団体出場権を獲得した。