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現役生活に“一区切り”…女子体操の立役者・杉原愛子22歳はいま何してる?「練習と学生の指導も。コーチの大変さを実感しています」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAsami Enomoto/Getty Images
posted2022/08/08 11:00
現役生活に区切りをつけた杉原愛子。現在の生活や2回出場したオリンピックの思い出などについて聞いた
実は五輪前に極秘手術も「弱いところを見せたくなかった」
その世界選手権から半年後。新型コロナウイルス感染拡大により、東京五輪の1年延期が決まった直後の2020年4月、杉原は病院のベッドにいた。前年の負傷により、左足をかばうことが続いた影響で、今度は右足首の舟状骨が疲労骨折していたのだ。医師の診断をあおぐと、ぽっきりと折れる一歩手前の状態。
「3月下旬に東京五輪の1年延期が決定したことですぐに手術をきめました」
極秘に入院してスクリューを入れる手術を行ったが、これらについてはメディアに一切明かさず、周りにも知らせなかった。
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入院そのものは3日間程度。退院してからはコロナ禍による自粛生活の真っただ中だったため、周りに知られることなく密かにリハビリを続けることができた。
「自分の弱いところを見せたくないと思って公表しなかったので、手術をした人には見えないようになりたいと考えて、必死にリハビリをやりました」
練習復帰までには4、5カ月かかると言われたが、トレーナーの支えもあって2、3カ月ほどで練習に復帰。
「もし予定通りに東京五輪があったら私は代表選手になれなかったと思います。ですから、五輪の1年延期は私にとってプラスになりました」
杉原本人が忘れられない演技
2度の五輪で最も思い出に残っている演技は、リオ五輪の団体決勝の平均台だ。
「自分がゾーンに入って演技をしてる感覚でした。歓声はすごく聞こえているのだけど、周りが目に入らず、真っ白なところに自分1人で演技をしているような感覚。すごく集中して楽しくできたという感覚でした」
東京五輪ではゆかの演技が思い出に残っている。
「大好きな西島隆弘さんの曲を使って踊れたことや、こだわってきた着地もうまくできました。やっていて鳥肌が立つほどでした」
自ら求め、決断し、実行する。その繰り返しがあったからこそ、杉原は輝いていた。《#2、#3につづく》
(撮影=榎本麻美)
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