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「見たことがない速さにビックリ」佐々木朗希20歳の全投球を受けた18歳捕手・松川虎生が明かす究極の一球とは?「スイッチの入れ方が全然違います」《球宴史上最年少デビュー》 

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石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

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photograph byAsami Enomoto

posted2022/07/27 06:19

「見たことがない速さにビックリ」佐々木朗希20歳の全投球を受けた18歳捕手・松川虎生が明かす究極の一球とは?「スイッチの入れ方が全然違います」《球宴史上最年少デビュー》<Number Web> photograph by Asami Enomoto

佐々木朗希の今季の全投球を受け止めている18歳のルーキー捕手・松川虎生

 右バッターのアウトコース、左バッターのインコースに投げ切ったとき、佐々木のボールは“無双”の一球となる。佐々木が完全試合を成し遂げた4月10日のピッチング、松川が挙げたベストボールは、7回ツーアウトから見逃し三振に斬って取ったバファローズの3番、左の吉田正尚への163km、インコースのストレートだった。

「あのインコースへのまっすぐは、自分の中でもすごくいい配球ができたと思います。朗希さんもすごくいいボールを放ってくれましたし、あの一球は今年のまっすぐの中では一番よかったんじゃないかな」

 吉田に対する初球、アウトコース低めに162kmのストレート。2球目も同じアウトローに構えて要求したストレートがワンバウンドになって(159km)、これでカウントは1-1。3球目、ふたたび松川はアウトローへ構える。160kmのストレートはベルト付近の高さへいくも、外角ギリギリに外れた。吉田はここまで一度もバットを振らない。そして4球目、松川はほぼ真ん中に、ゆったりと構える。佐々木が投げたのは144km、ややインコース寄りのフォークボールだった。フルスイングした吉田のバットが空を切る。

 2-2からの5球目、松川のサインを確認した刹那、佐々木の口元が緩んだ。松川はインコースに構える。佐々木が指にしっかりとかかったストレートを、狙ったインコースへ投げ切った。見送りの三振――あの吉田がバットを出すこともできなかった。

自分の配球が試合を左右する楽しさ。

 関西がタイガースの18年ぶりとなるリーグ優勝で盛り上がっていた2003年の秋、松川は大阪で生まれた。誕生日の10月20日はタイガースがホークスと日本シリーズを戦っている真っ最中だ。星野仙一監督率いるタイガースが福岡での第1、2戦、王貞治監督のホークスに連敗を喫した翌日、産声をあげた赤ん坊は“虎生”と名づけられた。母方の祖父がタイガースファンだったからだ。自分の名前は気に入っている、という松川はこう言った。

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