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「見たことがない速さにビックリ」佐々木朗希20歳の全投球を受けた18歳捕手・松川虎生が明かす究極の一球とは?「スイッチの入れ方が全然違います」《球宴史上最年少デビュー》
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph byAsami Enomoto
posted2022/07/27 06:19
佐々木朗希の今季の全投球を受け止めている18歳のルーキー捕手・松川虎生
「今まで見たことのなかった速さにビックリしました」
「朗希さんのボールを初めて受けたときは今までに見たことのなかった速さにビックリしましたし、フォークの落差にも驚かされました。バッターがわかっていても空振りする勢いのあるまっすぐ、そのまっすぐがあるからこそ活きてくる縦のフォーク、ゆっくりとしたカーブの3種類をどう組み立てるか。あとは左バッターへのスライダーをどう使うか。中盤、まっすぐがシュート回転してきたら、コースだけは間違えないように話をすること、あとは構え方を工夫することも大事かなと思います」
佐々木の課題を「シュート回転」だという松川は、だから、とこう続けた。
「シュート回転そのものは悪いことばっかりじゃないんです。シュート回転したまっすぐが右バッターのインコースへいい感じにいく場合もあって、そこはむしろ有効に使えているかなと思います。ただ、シュート回転して内に入ってくることが起こってはならない場面がありますから、そういうところではジェスチャーや声掛けをして意識づけをしっかりしないと……小さなことかもしれませんが、そういう一つ一つのことが大事になってくると思いました」
右バッターのアウトコースを狙ったストレートがシュート回転して中に入れば、真ん中の甘いコースへ吸い込まれることになる。1点を争う場面で、松川はあえて外のボールゾーンに構えることで、万が一の間違いが起こらないよう、気を配る。
「左バッターのインコースへ投げるときというのは、朗希さんからすればバッターが壁になってくれる分、放りやすいと思うので、けっこうインコース、ギリギリに構えます。それがシュート回転したとしても左バッターから見ると一瞬、ボール球に見えて腰を引くような反応になるので、左バッターに対してはいいんです。でも右バッターのアウトコースは(目標とするものがないので)朗希さんもいいところへ投げようとしてしまうんですかね。そういう部分がちょっと難しいんじゃないかと思います」
いやはや、じつに恐れ入る分析ではないか。ドラフト1位とはいえ、松川は高卒ルーキーだ。しかも経験が重視されるキャッチャーである。そんな18歳が開幕スタメンを勝ち取り、これほどまでに自分の考えを言葉にできることに驚かされる。