SCORE CARDBACK NUMBER
巨人クローザー・大勢(23)と桑田真澄コーチの約束「まだ試合でスライダーを投げるのは早いからな」…理想と語った“意外な投手”の名前
posted2022/07/23 06:00
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Nanae Suzuki
キャッチボールのラスト5球はスライダーを投げる。それがジャイアンツのクローザーを務める大勢と桑田真澄コーチとの約束だ。
「桑田さんは『まだ試合でスライダーを投げるのは早いからな、取っておけよ』と言うんですけど、サインが出たら投げざるを得ません(笑)」
ルーキーとして史上最速となるチーム60試合での20セーブを挙げた大勢の武器は、150km台のホップするかのようなキレのあるストレートとフォークボールだ。スライダーはほとんどがカウント球で、その割合は5%にも満たなかった。それでも、シーズン後半を見据えて強かに隠し持った武器を磨いてきたその成果は、30試合目の登板となる7月3日のカープ戦で窺えた。2点リードの9回ツーアウトで迎えた菊池涼介に対し、大勢は今シーズン初めて、ツーストライクからの決め球にスライダーを投じたのである。
「正直、自信のあるボールではないんですけど、スライダーも使えるボールだと思っていますし、もっと改善する余地がある。この先、まっすぐがしんどくなるときもあるでしょうし、そういうときに投げられたら自分を助けるボールになってくれるんじゃないかと思っています」
「江川卓さんみたいに…」
その7月3日までに大勢が対峙した30人の先頭バッターのうち、2球投げてストライクを取れなかったのは2人だけ。常にストライク先行で勝負する技術と勇気は、大勢のピッチングに安定感をもたらしている。
「ストライクゾーンで勝負できているのは、それだけの球を投げる取り組みをしてきているからです。理想は力感なく160kmを投げること。力に頼るんじゃなく、技で投げて160kmを出したい。クローザーは力んでしまう状況が多いポジションだからこそ、普段、意識して鍛えていることをうまくフォームに落とし込んで、技で投げたい。そうするとバッターの反応がワンテンポ遅れて、差し込まれる感じがあるんです」
落とし込めたときのフォームはどんなものなのかを訊くと、「あんまり言いたくない」と笑って誤魔化されてしまったのだが、ヒントだけと食い下がると、1999年生まれの大勢からまさかの名前が飛び出した。
「江川卓さんみたいに、引いて、押して、引く……そんなイメージのフォームで投げたいと思っています」