本郷　その年の全日本ジュニアに進むための予選です。その時は予選が2つあって、1つ目の中部ブロック予選では初めて表彰台に乗れたんです。トリプルルッツも初めて試合で成功させて、全日本ジュニアで強化選手に選ばれる手応えもあったのに、西日本予選のショートプログラムでミスが出た。シングルルッツ（トリプルルッツの予定）と転倒でまさかの最下位でした。さすがにみんなで落ち込んで、もうスケートを辞めた方が良いのではないか……と沈みました。

――せっかく実力が伸びてきたのに、壁にぶつかったわけですね。

本郷　本当にスケートを続けていいのかな、やめて仙台に戻るべきなのかな……って人生で初めてすごく考えたシーズンでしたね。でも西日本の結果が悔しかったのでもっと練習しようと。練習では跳べたのに、本番だと緊張して失敗することが多かったんですよね。

　一発勝負を意識した練習を重ねて、その年の全中で2位に入りました。そこで点数をクリアしたからジュニアグランプリの選考会にも呼んでもらえて。ジュニアグランプリシリーズの出場も決めて、やっと初めての海外試合に行けることになったんです。良くも悪くも、震災の年が私のターニングポイントでしたね。

鮮烈のシニアデビュー「いまだにあれっ？って（笑）」

――「やっと」ということは、同世代のなかでは遅いほうだったのでしょうか？

本郷　超遅いです。同世代の子たちはノービスから海外試合を何度も経験して、それでジュニアに上がってグランプリシリーズに出るぞっていう流れなんですよね。周りの選手と比べると、私はかなりスロースターターでした。

――スロースターターとおっしゃる一方で、世間的には、シニア1年目のGPロシアを制した鮮烈デビューの印象が強いように思います。

本郷　いまだにあれっ？とか思いますもん（笑）。元々はジュニアグランプリに出る予定だったから、ジュニア用のプログラムを作ってたんですよね。それがソチ五輪後にトップ選手たちの引退や休養があって、急きょ空いた枠に呼んでもらえた感じでした。

シニア1年目のGPロシア優勝を果たし、鮮烈デビューを果たした（2014年）　©️Getty Images

――シニアに挑戦したいという思いは強かったのでしょうか？

本郷　元々はGPカナダだけの予定でした。ジュニアとシニアを天秤にかけたときに「ジュニアだったら2戦目も出られるだろうし、結果によってはファイナルも狙える。でもシニアはどっちも無理」って先生に言われて。でも私はシニアに挑戦したい気持ちが強かったんです。

　先生にも「こういうチャンスが来年来る保証はないからシニアに出てみたら？」と後押しされて、大慌てでシニア用のプログラムに作り直しました。

――初参戦のGPカナダは5位入賞でしたね。

本郷　アシュリー・ワグナーさんとか、今までテレビで見てきた選手と同じリンクで滑っていることに感動しましたね。練習中も彼女たちをポカーンって口を開けたまま見入っちゃって、「口閉じなさい」って先生に注意されたり（笑）。カナダだけでも夢のような試合を滑れてうれしかったのに、まさかのロシアにも急きょ出られることになって。

――GPロシアでは「優勝しちゃった」のあどけない一言がとても印象的でした。

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