酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「殿堂入り級の三振王」中村剛也が偉大だから山川穂高も… 清原和博超え38歳おかわりさんが“ぽっちゃり野球少年”の夢なワケ
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2022/07/09 11:00
2015年、圧倒的パワーで本塁打王に輝いたころの中村剛也。そのフルスイングは今も昔も不変だ
投手の球速は相対的にアップし、今では155キロ以上の速球を投げる投手も各チームに数人以上いる。しかも、フォーク(スプリット)、スライダー、チェンジアップなど空振りを奪うための球種が発達し、投手の奪三振数、率は急速に上昇した。
昭和の時代、イニング数を上回る奪三振数を記録する投手は、江夏豊など少数を除いてほとんどいなかったが、平成以降はダルビッシュ有、大谷翔平から山本由伸、佐々木朗希まで、リーグのエース級はほとんどがイニング数を上回る奪三振を記録している。
平成以降のプロ野球は「三振でアウトを取るのが主流」になったと言っても良いだろう。
イチローや吉田正尚のような巧打者も凄いけど……
そんな中でも216打席連続無三振を記録したイチローや、2年連続規定打席以上の最少三振で首位打者を獲得した吉田正尚などの打者が登場するのも野球の妙味ではあろう。ただ一方では中村剛也のように「三振しても本塁打を打てばいいんだろ」と言わんばかりにバットを振り続ける打者がいるのも野球の魅力なのだ。
そもそも中村がここまで三振の山を築きながら20シーズン目の今も打線に連なっているのは、結果を出してきたからこそ。三振を喫しても次の打席、次の試合ではおつりがくるくらいの結果を出してチームの信頼を勝ち得てきた。
中村は三振をしても平然とベンチに下がる。それは「三振することに慣れている」のではなく、三振からでも何らかの収穫を得て、次回以降の打席に役立てているから。だから投手も決して侮ることはない。
要するに「どんなに三振をしても、あいつを打線から外すわけにいかない」と指揮官が思うような打者なのだ。
8月15日に39歳になる中村は、さすがに本塁打数は4本と減っているが、それでも打線に座ると迫力が違う。また三塁手としては、堅実で安定感のある守備を見せている。
通算安打数は1673本、野球殿堂入りの目安とされる2000安打にはまだ327本あるが、稀代のスラッガー中村剛也にはすでに殿堂入りの資格があると考える。
中村の活躍がなければ山川は誕生しなかったのでは
もう一つ、これを「功績」と言えるかどうかはわからないが――中村剛也の活躍がなければ、今季、3度目の本塁打王に向けて走る山川穂高という稀代のスラッガーは誕生しなかったのではないか。