「現役を続けられる間は、いつまでもやりたい」

　Jリーグ3連覇を目指して戦っている今シーズン。

　過去2年に比べると、今年の川崎フロンターレは「圧倒的ではない」と囁かれ始めている。

　守田英正、田中碧、三笘薫、旗手怜央といった骨格を担っていた存在が次々と海外移籍していった影響は、当然ながらある。さらにジェジエウ、大島僚太や登里享平といった主力の不在もあり、シーズン前半は苦戦を強いられた。

　それでも、チームは崩れずに優勝争いに踏みとどまっている。僅差でのゲームが多くなっているのは事実だが、圧倒できないならば接戦に強くなれば良いだけの話である。事実、試合終盤に勝負強さを発揮する試合も多かった。

　そして拮抗したゲームになればなるほど際立つのが、勝負どころでビッグセーブを披露するソンリョンの存在である。

　本人は「後ろで我慢強く粘れば、ゴールしてくれると信頼しています」と涼しげに語るのだが、今シーズンも鬼神の如く立ちふさがり、何度も窮地を救っている。今季の無失点試合はすでに9だ（6月30日現在）。リーグ戦は折り返し地点を過ぎたところだが、半分のゲームを完封している計算になる。

　もちろん、相手を圧倒する戦いが思うようにできていない現状には本人も満足していないだろう。ただその信念は変わらない。今は我慢すべき時期であると口にする。

「シーズン中は難しい時期もありますし、みんな一つになって、全員が成長する過程だと思っています。僕らは優勝を諦めていないし、目標を達成できる位置にいる。全員で最善を尽くすだけです」

――ウイスキーのように年を重ねてもっと美味しくなりたい。

　ソンリョンは自らをそう例えていたが、ウイスキーの醍醐味は熟成の仕方で味わいが変化することにある。韓国で豊潤なキャリアを積んできたレジェンドは、日本に来てから円熟味を増し、より重厚な味わいを生み出すようになった。

「僕は現役を続けられる間は、いつまでもやりたい。だから、1年1年続けていくだけですね。年齢を重ねても成長できると思うし、チームの力になりたいです」

　その落ち着きのあるコク深さは、まだまだピッチで熟成していけそうだ。＜#2、#3へ続く＞

#2に続く

「日本人GKのレベル低下」は真実か？ 川崎Fで進化を遂げた“韓流GKの代表格”チョン・ソンリョンの見解「僕は全くそう思わない」

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。