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「当然の完勝」ラグビー日本代表の次戦は世界2位フランス…注目は“荒々しさ”が戻ってきたリーチマイケルと堀江翔太の“冷めた視点”
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAtsuhi Kondo
posted2022/06/28 11:00
激しいポジション争いに身を置くリーチ マイケル。ウルグアイ戦では反則もあったが、“荒々しさ”が戻ってきた
たとえば、リーグワンの決勝のこと。サンゴリアス相手に、ワイルドナイツには手痛い反則がいくつかあった。試合後、堀江はこう話した。
「あれは反則でしたね。取られて当たり前ですよ」
驚いた。どちらかといえば、「レフェリーの解釈が……」という選手が多い中で、堀江は味方の反則を明確に認め、それを次の機会に生かすタイプの人物だ。
昨年、彼にロングインタビューをしたとき、ディフェンスにおける規律をどう考えるか、という話に及んだのだが、まことに興味深い答えが返ってきた。
「相手がずっと攻めてくるでしょ、フェイズが10を超えて、20に近づいて行くような時。しかも後半も20分が過ぎて、自分たちが負けてるシチュエーションです。そうなれば、誰だって相手からターンオーバーを奪いたくなりますよね。でも、どんなに頑張っても、相手に流れがあるうちは反則を取られるのがオチ。そういう時はジッと、淡々とディフェンスに徹していればいい。若いと、そのあたりの塩梅が分からないというか、我慢しきれずに反則してしまうんです。いちばんいいのは、ようやく“来た”と思ったら、そこで初めてボールに絡むこと。それでいいんじゃないですかね。来ない時は来ない。この年齢になると、その境地に到達します(笑)」
なにやら、ひとりだけ客観的に、上空から「ドローン」的な視点でピッチを見渡し、プレーしているかのようだ。
「勝って反省できる試合がいちばんいい」
ウルグアイ戦での堀江のプレー時間は20分ほどで、堀江の冷静な視点が規律に反映されるためには、いろいろな意味で時間が足りなかったように見える。その意味で、ウルグアイ戦は「勝って反省できる試合」だった。
そういえば、1991年W杯の監督を務めた宿澤広朗氏がこんなことを話していたのを思い出した。
「勝って反省できる試合がいちばんいいかな。昔の人はよく言ったものだと思いますよ。『勝って兜の緒を締めよ』って」
日本代表のサマーテストは残り2試合。
7月2日の豊田スタジアム、9日の国立競技場で世界ランキング2位のフランス相手に、リーチの猛々しさと、堀江の冷めた視点がチームにどう共有されるかに注目したい。
そしてまた、今年のシックスネーションズを全勝優勝したフランス(メンバーは若手中心)が、どんなラグビーを見せてくれるのかも、実は楽しみにしている。
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