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野村克也が絶賛した「完ぺきに近い投手」ダルビッシュ…敵なし状態の11年前、なぜ沢村賞を逃した? 立ちはだかった“もう一人の天才”とは 

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太田俊明

太田俊明Toshiaki Ota

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posted2022/06/17 11:01

野村克也が絶賛した「完ぺきに近い投手」ダルビッシュ…敵なし状態の11年前、なぜ沢村賞を逃した? 立ちはだかった“もう一人の天才”とは<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

「プロ野球史上No.1投手を探る旅」。金田正一、田中将大に続く第3回は、あの野村克也氏が「平成最高の投手」と評したダルビッシュ有だ

史上唯一の5年連続防御率1点台

 ダルビッシュは高校卒業後、05年に日本ハムに入団。12年にテキサス・レンジャーズに移籍するまでの7シーズンを日本でプレーし、通算93勝38敗、勝率.710、防御率1.99の成績を残した。

 7割超えの勝率と1点台の通算防御率は驚異的な数字といえる。特に、07年から11年までの5年連続防御率1点台は、投手優位だった昭和の時代の金田正一、稲尾和久、村山実といった大投手たちも成しえなかった日本プロ野球記録である。

 相手チームからすれば、「9回の攻撃で2点取れない」投手。だから、好調時のダルビッシュが先発すると、相手は「今日は負け」と試合前から士気が上がりにくいケースもあるだろう。それが「日本では戦うモチベーションを保つのが難しくなった」と、もともとメジャー志向はないと公言してきたダルビッシュが渡米する一因になったのかもしれない。

 では、それほどまでに圧倒的だったダルビッシュの日本におけるベストシーズンはどのような成績だったのか見てみよう。

日本時代、ダルビッシュのベストシーズンは?

 ダルビッシュは、入団3年目の07年に沢村賞、07年と09年にパ・リーグMVPを受賞しているが、投手成績から見たベストシーズンはメジャー挑戦前年の11年と考える。 

 この年、ダルビッシュは25歳。余談だが、これまでとりあげてきた金田正一、田中将大のベストシーズンも同じく25歳というのは面白い。

●ダルビッシュの成績
【07年】
登板26 完投12 完封3 勝利15 敗戦5 勝率.750 投球回207.2 被安打123 与四球49 奪三振210  防御率1.82 WHIP0.83
【09年】登板23 完投8 完封2 勝利15 敗戦5 勝率.750 投球回182.0 被安打118 与四球45 奪三振167 防御率1.73 WHIP0.90
【11年】登板28 完投10 完封6 勝利18 敗戦6 勝率.750 投球回232.0 被安打156 与四球36 奪三振276 防御率1.44 WHIP0.83

 2011年のダルビッシュは、登板、完封、勝利、投球回、与四球の少なさ、奪三振、防御率、WHIPで自己ベストを記録している。より多く投げ、より多く勝ち、より多く三振を奪い、四球を出さず、点を与えない。この年が日本ハム在籍時代のダルビッシュのベストシーズンで間違いないだろう。

 ところが同年、ダルビッシュは沢村賞を受賞していない。25試合以上登板、完投10試合以上、15勝以上、勝率6割以上、200投球回以上、150奪三振以上、防御率2.50以下という、沢村賞の選考基準を全て十二分にクリアしているにもかかわらずである。

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