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「井上尚弥は全階級で最高のパンチャー」「1位に浮上するかは50/50だが…」米リング誌記者に聞く“怪物が世界の頂点に立つ日”
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byAP/AFLO
posted2022/06/09 17:15
世界が注目する一戦で、これ以上ないKO劇を見せた井上尚弥。目の肥えた記者たちからも賞賛の声が相次いでいる
井上の出来は素晴らしく、その時点で勝負は決まったも同然。ドネアがダメージを引きずって迎えた第2ラウンドは井上の左フックが高確率でヒットし、こうなればもうドネアは耐えられるはずもありませんでした。
第1戦と比べ、井上が何らかの主要なアジャストメントを施したとは思いません。より優れた戦いをし、能力を存分に発揮したということ。あれほどのビッグパンチャーが好調だったとき、被弾に慣れているベテラン選手であっても対抗しきれなくなります。
個人的な見方ですが、私は井上が全階級で最高のパンチャーだと考えています。ヘビー級のデオンテイ・ワイルダー(アメリカ)がベストパンチャーとみる人もいますが、パウンド・フォー・パウンド(階級の違いを取っ払った評価)ではパンチ力でも井上が上というのが私の意見。それほどの驚異的なパンチャーのパンチをまともに浴び、今回のドネアは第1戦のように耐え切ることはできませんでした。
「井上とパンチを交換したのは無謀だった」
ドネアの側から見ると、先ほども話した通り、井上と初回からパンチを交換したのは無謀だったのかもしれません。井上の動きがシャープだったため、多少のパニックもあったのでしょう。結果として、まだ身体が温まっていない状態で致命的なパンチを浴びてしまいました。
ただ、それを今、私がここで言うのは簡単ですが、ドネアにそうせざるを得なくさせるような何かが井上にあったのだと推測します。だとすれば、やはり今戦ではただ井上を称賛するのが適切なのでしょう。