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井上尚弥はなぜ“戦慄の秒殺KO劇”を量産できるのか 「たぶん倒せる。急所を狙ってガツンとね」「あの60秒ですごく駆け引きを…」
posted2022/06/09 06:01
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Takuya Sugiyama
<名言1>
あの60秒ですごく駆け引きをしていた。
(井上尚弥/NumberWeb 2018年10月9日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/832070
◇解説◇
鳥肌が立つ衝撃KO劇、再び。
6月7日に行われたWBA、IBF、WBC世界バンタム級の3団体統一戦、井上尚弥はノニト・ドネアを2回1分24秒TKOで下し、日本初となる3団体統一王者になった。
1ラウンド目の右クロスカウンター、2ラウンド目の左フックで、再戦となったレジェンドのドネアをリングに沈め、わずか「264秒」で試合を終わらせた。この圧勝劇に、アメリカの放送局「ESPN」も「(モンスターの)ニックネームはこれまで以上にふさわしかったんじゃないか?」とイラスト入りで紹介するほど、世界からも注目されている。
23戦23勝20KO。全勝であるとともに「KO率87.0%」という数字を残している井上。凄まじいのは「3回以内にKO」しているのが計10試合もあること(1回:3、2回:4、3回:3)。そのうち直近10戦で6回も記録しているのだから、あまりに現実離れしている。
井上尚弥の「70秒KO劇」にあった伏線とは
井上尚弥の怪物性を世間一般に知らしめたのは、2018年10月に行われたワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)バンタム級準々決勝、WBA世界同級タイトルマッチだろう。
井上の対戦相手は元WBAスーパー王者フアン・カルロス・パヤノ。WBA初防衛戦としては骨のある相手だったはずなのだが……試合は井上の1回1分10秒KO勝利。井上が放ったパンチはわずか3発だけで、パヤノは後頭部からリングにたたきつけられた。
「パヤノは半身がきつかったから距離があって、どう当てていこうか、考えていたんです。それがあのアッパーで少し勢いが止まった。あそこでいけるというのがありました。(ジャブで)外から、外から、と意識をさせて……」
試合後、井上はこう“70秒KO劇”の伏線を振り返っていた。先にパンチを出してきたパヤノに対して、井上は右アッパーをカウンターで合わせると「勢いが止まった」のだという。そこから間合いを詰めつつ距離感を測り、左を差し込んでからパヤノの左ガードが顎から外れた瞬間を見逃さなかった。
右ストレート、一閃。