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「井上尚弥は全階級で最高のパンチャー」「1位に浮上するかは50/50だが…」米リング誌記者に聞く“怪物が世界の頂点に立つ日”
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byAP/AFLO
posted2022/06/09 17:15
世界が注目する一戦で、これ以上ないKO劇を見せた井上尚弥。目の肥えた記者たちからも賞賛の声が相次いでいる
こうして井上はバンタム級の3つのタイトルを獲得し、最後の1つであるWBO王座はポール・バトラー(英国)が保持しています。バトラーは良い選手ですが、このスポーツには“レベルの違い”というものがあり、井上対バトラー戦は井上が圧倒的に有利と目されるに違いありません。それでも4団体統一戦には大きな価値があり、英国でも、日本でも、おそらくアメリカでも注目を集める試合になるはずです。
井上はまだ4団体統一王者になった経験はないですし、今後、パウンド・フォー・パウンドで最高の評価を得るためにも“Undisputed”の称号は意味を持ってきます。バトラーのマネージャーを務めるジョー・ギャラガー氏は井上との試合を望んでおり、バトラー自身も同じ気持ちのよう。この統一戦の成立を妨げる要素がそれほどあるとは思えません。年内に4団体統一戦を行い、それに勝った上で来年、スーパーバンタム級に上がるというのが井上にとっても最善の方向性でしょう。
スーパーバンタム級は「エキサイティングな道のり」
約3年前、私が取材した際、井上はスーパーバンタム級が彼にとっての上限かもしれないという話をしていました。井上は骨格的に大きいわけではなく、フェザー級の選手はさらに一回り大柄なので、上げ過ぎたくないという気持ちは理解できます。それでもスーパーバンタム級なら井上の実力は十分に通用すると私は見ています。
最近ではWBC、WBOスーパーバンタム級王者スティーブン・フルトン(アメリカ)と井上の対戦を熱望する声が増えてきています。フルトンとの試合は井上にとっても試練になるでしょうが、それゆえに見どころは満載です。フルトンはまずWBA、IBF同級王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との統一戦を望んでおり、その試合の勝者に、バトラーに勝ってバンタム級4団体統一した井上が挑むような流れになれば、これはもう理想的なシナリオになります。
もちろん井上、フルトン 、アフマダリエフのプロモーターがそれぞれ違うことを考えればマッチメイクは容易ではありませんが、それでも私は井上の行く手にはエキサイティングな道のりが待ち受けていると信じています。