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コンビ結成は「インスタのDMから」…なぜ日本の女子選手は“ダブルスの名手”から好かれるのか?〈24歳柴原瑛菜が全仏制覇〉
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2022/06/05 11:05
杉山愛とブパシの優勝から23年、フランスのパリで開催されている全仏オープンで24歳の柴原瑛菜が日本女子3人目のミックスダブルス・チャンピオンになった
答えはシンプル。ダブルスを専門に戦っている日本の男子選手は、グランドスラムに出るレベルとなると今のところマクラクラン勉しかいない。テニスはその賞金の差を見てもわかるように、完全にシングルスがメインの競技。グランドスラムではシングルスのランキングを使って出場することもできるが、シングルスを5セットマッチで戦う男子がダブルスも戦う体力的・精神的余裕はない。
ましてや混合ダブルスである。驚く人も多いかもしれないが、今回、柴原とコールホフが得た優勝賞金は男子ダブルスや女子ダブルスの約5分の1しかなく、シングルスの1回戦負けよりもわずかながら少ないのだ。今大会の場合、ミックスダブルスの優勝賞金は2人で12万2000ユーロ(約1700万円)で、シングルスの1回戦敗退者は6万2000ユーロ(約860万円)を受け取った。
ミックスダブルスはひょんなことが起こるから楽しい
娯楽的な性質が強いミックスダブルスだが、柴原は「この優勝の経験を、これからダブルスにもシングルスにも自信にしていきたい」と前向きにとらえ、またウィンブルドンでもコールホフと組んで出場したいと熱望しているが、彼のほうは思案中だという。なぜなら、ウィンブルドンでは男子ダブルスも5セットマッチで戦われるからだ。ダブルス・スペシャリストであるコールホフにとって次に狙うのは間違いなく男子ダブルスでのグランドスラム・タイトルであり、ミックスダブルス出場はその妨げになるリスクがある。
コールホフも素敵な笑顔で日本のファンを増やしたに違いないが、柴原とのペアが再現されなければされないで、また新たなフィーリングがどこかで生まれるかもしれない。ミックスダブルスはひょんなことが起こるから楽しいのだ。