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オリンピックPRESSBACK NUMBER
盟友・小平奈緒のレース中に放送席で…イ・サンファが明かす北京五輪“あの涙の理由”「ナオの姿には自分の姿も映って見えた」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byMark Hoffman/USA TODAY Sports/Sipa USA/JIJI PRESS
posted2022/06/03 17:04
いまだ破られないスピードスケート女子500mの世界記録36秒36を保持したまま、19年に引退したイ・サンファさんに、小平奈緒との関係やエピソードを聞いた
最初の100mは全体で20位の10秒72。バックストレートから第2コーナーを抜けてゴールラインに向かって滑る姿を見つめていた李さんの目からみるみる涙があふれていった。目の前には、まさかの17位に終わった小平がいた。
李さんは小平の“異変”を目の当たりにし、小平が不安を抱えながら決戦の舞台に立っていたことを悟った。李さんは解説者席から動けなかった。
あの時の涙はどんな感情だったのか。
「ナオは、おそらく完璧なレースはできないだろうとわかった上での試合だったと思います。しかし、それでも彼女は出場しました。その姿に、やはりナオはナオだと感じました。それに、ナオの姿には自分の姿も映って見えたんです。だから余計に心が痛かったのです」
小平の姿に重なって見えたのは、母国開催の五輪で3連覇の期待を背負いながら、ケガでもがいていた2015年頃の自分の姿だった。
「スピードを出せない状態なのに、最後までやらなきゃいけない。膝を痛めた時のことを思い出しました」
北京五輪では小平のレースがすべて終わった後に韓国テレビの企画で対談する機会があり、「あなたの応援のお陰で北京五輪に挑戦できた」と小平から言われたという。李さんはシーズン開幕当初から小平にメールで「ナオならできるよ」という言葉を何度も送っていたのだった。
「ナオから贈ってもらうのは、カルピスとぽたぽた焼」
初めて言葉をかわした十数年前から続けていることがある。それぞれの国から国際便でプレゼントを送り合うことだ。李さんはディズニーのドナルドダック、リロ&スティッチや、ピカチュウ、となりのトトロが好き。小平は李さんが好きなものをまめに送ってくれるという。
「私がナオから贈ってもらうのは、カルピスとぽたぽた焼。ほかにも、ディズニーグッズ、茶碗、漫画などを送ってもらいました。私からは、ナオが好きな海苔、ソウルと書いてある服などですね」
待たれる再会の日。「2人で何をしたいですか?」と聞くと、李さんははにかみながら答えた。
「次はソウルにナオを連れていって、そこで彼女がやりたいことを一緒にやりたいですね」(つづく)
©JIJI PRESS ※クリックいただくと、あの平昌五輪レース後の感動シーン、イ・サンファさんの最新カットなど多数写真がご覧になれます
〈放送予定〉
NHK BS1 スポーツ×ヒューマン 6/6(月)21:00~
「あなたがいるから戦える〜小平奈緒×イ・サンファ〜」
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。