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プロ野球PRESSBACK NUMBER
ロッテ完全試合の6年前…恩師が語る12歳松川虎生“衝撃デビュー戦”「90kg近くあった体格以上に…」「上級生と比べても力の差は歴然」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph bySueyoshi Kawabata
posted2022/05/19 11:05
中学時代の松川虎生。彼が所属したチームを訪れると、そこには驚きの“怪物伝説”が眠っていた
「余裕で間に合うはずのセカンドでタッチアウト(笑)。ベンチに戻ってきた松川に、『ホームランと思ってゆっくり走ったやろ?』と聞いたらあいつ、『違います! 必死で走りました!』って。足の遅さに違う意味でみんなビックリしてもうて、あれは笑ったなあ」
唯一の欠点は「鈍足」だったが、終盤の第3、4打席目は足の心配をする必要がなかった。入ったばかりの1年生はいきなり、2打席連続で「敬遠策」を取られたのだ。これもまた“怪物伝説”の序章となった。
ちなみに、その後の3年間のトレーニングで松川はその「鈍足」も克服し、公式戦では盗塁も記録している。大きな体に似合わず意外にも「セーフティーバント」も得意だった。
「バントがめちゃくちゃ上手なんですよ。失敗したことは一度も見たことない。走者だけでなくバントした松川も必ず一塁でセーフになっていました。野手が投げられないようなところに、ほんまに上手く転がしますからね」
「中学でも高校でも、あいつを悪く言う人はいなかった」
川端監督はチームに入った松川と一番最初に2つの「約束」をした。1つは『プロ野球選手になる』こと。そして2つ目は『誰からも愛される選手になる』こと。
「ただプロになるだけじゃなく、周りの人やファンに愛される選手になってほしい。それは、(息子の)慎吾にもよう言ったから、お前にもそうなってほしいんや、と約束しました」
それから3年間、監督と子どもたちが定期的に交わす「交換ノート」に松川は、毎回必ず大きな字でこの2つの誓いを書き込んでいた。
「絶対これお父さんが書いたやろ、って驚いたくらいの綺麗な字でね。ずっとその気持ちは揺るがなかったです。優しい子やし、中学でも高校でも、あいつを悪く言う人はいなかった。人徳ですよね。ほんまに約束通り、愛される選手になってくれましたよ」
松川の素顔を熟知しているからだろう。佐々木朗希がボールの判定をめぐって白井一行球審から詰め寄られた場面。すかさず二人の間に割って入り、場を収めたシーンについても、冷静に受け止めていた。
「まあなんというか、松川らしいよね」
(後編へつづく)
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