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[名匠が明かす4強の勝算(2)]ドウデュース「ダービーロードをゆったりと」
posted2022/05/19 07:02
text by
太田尚樹(日刊スポーツ)Naoki Ota
photograph by
Keiji Ishikawa
焦らず、ゆったりと。
春に咲くスミレのような青紫色を身にまとい、友道廐舎の人馬が悠然と姿を現す。琵琶湖畔から10kmほどにある栗東トレーニングセンター。2000頭以上の競走馬が鍛錬を積み、春季なら午前6時の馬場開門時刻には、調教コースへ馬群が押し寄せる。整地されて走りやすい時間帯だからだ。
そんなラッシュアワーに、パープルの一団はいない。最大4グループに分けた第1陣が馬場へ入るのは開門の20〜30分後。あえて混雑を避ける。そこには理由がある。開業21年目を迎えた友道康夫が口を開く。
「朝一番のいい馬場で走りたいのはありますけど、周りに馬が少ない時の方が、自分のペースでゆったり走れますから」
急かされない環境で、落ち着いて走る調教を積み重ねる。廐舎3頭目のダービー馬を目指すドウデュースは、そんな名門の申し子のような存在だ。鞍上の指示に従順で自由自在。レジェンド武豊が「言うことがない」と感嘆する、いわばセンスの塊。担当する前川和也も舌を巻く。
「本当に力まないし、必要な時にすぐに加速できる。短距離向きのスピードと長距離向きの気性を持っているのが強みです」
将来有望な逸材を育むのが“日本一の長距離軍団”だ。昨年はJRA281回出走の平均距離が1938.1m。東西196廐舎でトップだった。国内GIで最長距離の天皇賞・春もワールドプレミアで制した。長丁場で不可欠な折り合いは、焦らせない調教で培われる。振り返っても、所属馬がレースや追い切りで頭を上げている場面はほとんど見られない。一方で、スプリントGIへの出走は開業から0回のまま。背景には友道自身の長距離志向もある。