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相撲春秋BACK NUMBER
「今は断髪式が心配なの(笑)」「珍しい横綱5人掛かりもやりたい」引退から3年・安美錦が“同級生”能町みね子に語った、断髪式のプラン
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byTomosuke Imai
posted2022/05/15 06:01
好角家のコラムニスト・能町みね子さんと元安美錦・安治川親方。断髪式を前に、ともに昭和53年度生まれの“同級生”の対談が実現した
安治川 いやいや、そう言ってくださって、「こちらこそありがとうございました!」ですよ。やり切ったし、もう自分でも充分でしたから。でも、もしあそこでケガをしていなかったら、今でも相撲取っているかもしれないな……。
能町 ええ! まだ?
安治川 いやいや。これは“たられば”の話だけれどね。今はただただ、断髪式のことが心配なの(笑)。
能町 この夏場所後に断髪式が控えているんですよね。どんな形になるんですか?
安治川 もちろん後援者の方やご縁のある方に、大銀杏にハサミを入れてもらうのがメインですけれど、断髪式というのは、本場所と違った興行でもあり、地方巡業のプログラムと同じ感じです。なかなか見ることの出来ない「髪結い実演」「やぐら太鼓打ち分け」「相撲甚句」。横綱の「綱締め実演」や関取衆による取組もありますよ。せっかく弟弟子の照ノ富士が横綱になってくれたから、珍しい「横綱5人掛かり」などもやってもらいたいんだけれど……。
能町 5人の関取が横綱に順番に挑んで行き、それを横綱が次々にバッタバタとなぎ倒して行くヤツですね。
安治川 そう。最後に僕が横綱に挑んで勝っちゃおうかな(笑)。僕の長男が5歳で、お揃いの化粧まわしをつけて一緒に土俵入りもしたいんです。勝手な親の思いなんですが、最後に国技館の土俵に一緒に上がりたい。今、長男のご機嫌をうかがっているところなんですわ。うちの長男は、相撲に興味を持ってはいるんです。「はっけよい!」と一緒に相撲を取ったら、いきなり僕の首根っこを押さえてはたいて来る。「おいおい、パパの相撲を見すぎじゃないか? 今からそれを覚えちゃダメだぞ」と(笑)。
能町 あははは、もうすでに!
安治川 時節柄、コロナ感染対策も万全にしなきゃいけないですし、断髪式の準備はけっこう大変です。コロナ禍で2回も延期になってしまい、この度、やっとマゲを切れる。毛髪も薄くなっていました(笑)。こんなに長きにわたる現役生活で、ファンの皆様をハラハラさせてしまっていたのに、引退後から断髪式までの期間もこんなに長くなってしまいまして、またハラハラさせてしまったかも。関取在位記録も史上最長だけれど、引退から断髪式まで約3年――こちらの方も、今のところ最長記録かもしれない。僕の最後のマゲ姿を見に、能町さんも国技館に来て下さいますか?
能町 「スーツ姿にマゲ在位最高記録」ですね。今後、誰もこの記録を破れないかもしれない(笑)。もちろん、私は見届けさせていただきます。この目にしっかり焼きつけます!
<前編から続く>