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「じつは、あの前日に休場するか迷ってたんです」断髪式直前・安美錦43歳がいま明かす、19年前・横綱貴乃花“最後の相手”になった日 

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佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

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photograph byTomosuke Imai

posted2022/05/15 06:00

「じつは、あの前日に休場するか迷ってたんです」断髪式直前・安美錦43歳がいま明かす、19年前・横綱貴乃花“最後の相手”になった日<Number Web> photograph by Tomosuke Imai

元関脇の安美錦(43歳)。2019年7月場所で引退し、5月29日に両国国技館で断髪式を行う

安治川 あの時、異様な雰囲気だったなぁ。

能町 当時の貴乃花関は引退が近くて、「安美錦、頑張れ!」というよりも、「貴乃花、大丈夫?」という感じではありましたけれど。翌日に貴乃花関が引退し、「歴史に残るものを見ちゃったな」と思ったものです。

安治川 実はこの時、前日の武双山(現藤島親方)戦で肘を痛めていて、休場しようかと思っていたんです。でも、割(取組表)を見たら相手が貴乃花関だったので、「これはどうしても出なければ!」という感じでもあった。初めての対戦だし、やりたかったんですよ。出し投げで崩しての送り出しで勝ったのですが、肘の痛くない方に回り込もうと思っていたのに、気がついたら痛い方の腕を使っていた。痛みも気にならなかったんですね。頭で考えたこととまったく違うことをやっていたんです。周りの歓声や声援とかもよくわからなかったなぁ……。貴乃花関は眩しいというか、光に包まれているというか、他にない空気感――オーラがありましたよ。

能町 ほぅ~。

安治川 同じ横綱でも、また武蔵丸関は違って、ただただ脅威でしかなかった。仕切った時に、3倍くらい大きく見えるんです。向こう側の客席が視界に入らないしね(笑)。唯一、仕切っていて「怖いな」と思ったのが武蔵丸関との初対戦。張り手一発で吹っ飛ばされましたし。

能町 平成の相撲界を生き抜いてきて、ほかの横綱との対戦もいろいろありましたよね。

安治川 貴乃花関、武蔵丸関、朝青龍関、白鵬関、鶴竜関。日馬富士は同部屋でしたし、横綱になった稀勢の里関とは対戦がなかったです。曙関には僕が若い頃に稽古をつけてもらったことはあったけれど、僕が幕内に上がった前後には曙関も若乃花(三代目)関も引退していましたから。僕は高見盛関と新入幕が一緒だったし、巡業先では「新入幕のヤツは最後まで土俵に残っていろよ」という雰囲気でね。高見盛関は曙関の弟弟子だから、いつも曙関のそばにいる。そうするとなんだか僕も逃げられないというか……(笑)。先代の二子山親方(元大関貴ノ花)が当時の巡業部長で、体の細い力士がメチャクチャ好きだったみたいなんですよ。

「しっかりやれ!」叱られた記憶

能町 目を掛けられちゃったんですか?

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