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高木美帆「顔が死んでいたけど大丈夫?と連絡が…」“考え抜いた北京五輪”知られざる舞台裏を告白「最後に、もうこれ以上はできないと」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKosuke Mae
posted2022/05/22 06:00
北京五輪で4つのメダルを獲得した高木。1000mでは自身初となる個人競技での金に輝いた
現在27歳(編注:取材時)。「若いと言われますが、故障が出るようにもなってきました。それも踏まえて、どのようにスケートに取り組んで行きたいかを考えたいと思っています」
それでも、これだけは言えると思うことがある。金メダルや世界記録に挑むことがどれほど魅力的かということだ。
「そこを味わえたら楽しいよ、そこまで行けたら本当に面白いよとは言えるし、言いたいですね」
「今は4年前より前向きですよ」
今季のすべてのレースを終えた今、高木はあらためて、完全燃焼した北京五輪を振り返りながら、しみじみと語った。
「3000mから始まり、試行錯誤する種目があって、だんだん調子が上がっていく種目があって、あと一歩届かない種目があって。それらがあって最後の最後に1000mの金メダルを獲ることができました。大会の最初から最後まで改善するために考え抜いた2週間があったから、やりきったと思うことができた。妥協したり、考えることから手を抜いたり、ひるんだり、もっとこうすればよかったと思ったことはありません。最後に『もうこれ以上はできない』と感じたのは、幸せだったと思います」
来季はナショナルチームの体制が変わるが、今後の選択肢を自分で握ることができているとも感じている。
「やりたいこと、新しく挑戦してみたいことを選べる場所までは来られたのかな。だから、今は4年前より前向きですよ」
見上げる視線の先には満開に咲き誇るソメイヨシノがあった。次の道をどこに定めても、必ずその枝に花を咲かせるだろう。そんな彼女の姿とソメイヨシノが重なった。
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